業界の課題と未来への願い

田中氏は撮影現場で常に感じていることがある。「アクションって、派手に見えても実はすごく地道な仕事なんです。作業量も多くて本当にハード。でもそのわりに、評価の対象になりづらい面もある」。
担い手の不足も気になるところだ。アクション業界を目指す若者が少なくなっている現状に、危機感を抱いている。「純粋に“楽しい”と思って続けられるような現場や環境をつくらないと、人は残らない。もちろん仕事ですから楽しければいいというものでもないですが、それが入り口になってくれたらとは思っています」。
そうした環境づくりのためにも、自身が率先して「本気でやることの楽しさ」を見せるようにしている。“寄り添う”一方で、時には “攻める”ような演出も意識していると明かす。「スタントマンの仲間だったら、もう少しやれるんじゃないかと思う部分もある。でも、限界を知っているからこそ、そこに挑む面白さもあるし、その魅力を伝えていけたらいいなと思っています」。
「アクションって、ただ動くだけじゃない。頭を使って、どう見せるか、どう伝えるかを考え続けなきゃいけない。だからこそ、そこに面白さがあるし、もっと認められてほしい分野なんです」。
今後については、「継続的に作品づくりができる環境整備」が重要だと語る。「仕組みがあれば、自然と若い担い手も育つ。だから今は、その土壌を少しずつでもつくっていけたらと思っています」。
田中氏が目指すのは、単に“かっこいい動き”を作ることではない。映像作品において、アクションが正しく機能し、俳優と作品を支える柱になること。そして、次の世代が誇りを持って、それを担える未来を築くことだ。
表に見える激しい動きの背後に、緻密な設計と撮影現場を支える人々との丁寧な共有がある。変わり続ける映像制作の現場で、田中氏が示すのは「どう作るか」ではなく「どう伝えるか」。その姿勢は、日本のアクションのあり方が次の時代に進むためのヒントにもなっていくはずだ。