陸上競技の富士北麓ワールドトライアルが8月3日、富士北麓公園富士山の銘水スタジアムで行われた。男子100m予選で守祐陽(21、大東大4年)が10秒00(追い風1.3m)の日本歴代5位タイ、学生歴代2位をマーク(決勝は棄権)。東京2025世界陸上参加標準記録に到達した。守は現時点では、日本選手権優勝者で標準記録を破った桐生祥秀(29、日本生命)に次いで、代表争いで2番目の位置となった。守のこれまでの自己記録は10秒13。昨年の織田記念と関東インカレに優勝し、今年5月には追い風参考記録ながら9秒97(追い風3.9m)をマークした。注目される存在ではあったが、代表争いで優位に立つことは予想されていなかった。ニューフェイスの強さはどこにあるのだろうか。
フィニッシュ前の勝負に強さ
終盤の強さが守の特徴だ。学生の大会では前半や中盤からリードできるが、昨年の織田記念は4人が0.03秒差内の混戦を、フィニッシュ前で抜け出した。今大会予選3組でも樋口陸人(25、スズキ)に先行されていたが、後半で一気に逆転した。レース後の取材で走りの特徴を質問されると、「ピッチを最後まで維持できることです」と守は即答した。
守はピッチ型のスプリンターで、最大ピッチは秒間5歩を超える。ストライド型の選手は秒間4.3〜4.5歩だ。フィニッシュ直前には最大ピッチから0.2〜0.4歩減少し、それを補おうとストライドが伸びるのが普通である。客観的に見ても緩慢な動きになり、ストライドが大きくなってもスピードは落ちる。
守も多少の減速はするが、他の選手の減速より小さいため前述のような強さを発揮する。大東大の佐藤真太郎短距離監督は「こんなことがあるのか、というくらいに(正確に計測したデータで)全然落ちていなかったレースもありました」と明かした。富士北麓ワールドトライアルのデータは不詳だが、最後まで秒間5歩以上を維持していた可能性がある。守はスプリンターの常識を覆す走りで、終盤の強さを発揮している。

















