戦後80年で語り部は大幅に減少
神奈川県内では西岡さんをはじめ、被爆や空襲の経験者、中国残留邦人の帰国者などが語り部活動を行っている。しかし、過去には133人の語り部がいたものの、多くの人が既に亡くなり、今年3月時点で語り部として登録している人は28人にまで減少した。
神奈川県生活援護課で語り部活動を担当する梶聡志さんは、戦争の記憶を今後どう継承していくのかが課題になっているときに、「対話型語り部講話システム」を知ったという。
「語り部活動を残していくために、いろいろな取り組みを進めてきました。平成25年度には語り部の証言をDVDに収録して、かながわ平和祈念館で見られるようにしています。ただ、映像で話を聞くだけでは記憶、印象に残りにくいのではないかと思われました」
「また、先の大戦から長い年月が経過し、語り部として活動している人数が減少しています。記憶の継承をどうすればできるのかと考えていたときに、浜松市の企業が開発した、戦争体験を語る映像と対話ができるシステムのことを知りました。そこで企業に話を聞きに行き、約200万円の予算で映像を収録していただきました」

西岡さんの映像の収録は、昨年10月に自宅近くで行われた。普段の講話で話している内容に加えて、170を超える質問に対して答えてもらう様子を4Kカメラで収録。2日間にわたり、10時間以上に及んだ。

今年3月には、かながわ平和祈念館周辺に住む子どもたちが参加して、体験会が行われた。西岡さんの等身大の映像と対話をしたほか、西岡さん本人も参加。この体験会を経て、今年6月から、かながわ平和祈念館に常設された。
