フィクションの映画と、ノンフィクションの自伝

神戸:
映画と書籍、2つの作品が並びました。
映画『桐島です』は、事実をベースにした創作です。
匿名で逃げ続けていた桐島さんがどんな人だったのかは、あまりよく分かっていません。
元になったのは梶原さんの脚本で、梶原さん自身は(逃走生活を)体験している。
一方、書籍『爆弾犯の娘』は事実を書いたノンフィクション。
この2つが揃っている。「さすが『企画 小宮亜里』だな」と思いました。
小宮:
お酒を飲んで思いつきで言っただけで(笑)
それ以外、何もしていないんですけど。
神戸:
2つを合わせ見ると、すごく刺激的です。
『爆弾犯の娘』に書かれていることは、本当の話じゃないですか。
小宮:
そうですね。
もっともっといっぱいエピソードがあったんですけど、やむを得ず削りました。
同年代でこういう人生を生きている方が今、脚本家として活躍している。
それがすごくうれしいです。
神戸:
この本を読んでいて、笑ってしまうことがいっぱい。
「ちょっと、これ本当ですか」とおかしくなることがありました。
「この書き手は手練れだなあ」という感じがしました。
小宮:
本当に、さすが脚本家。距離感がすごくいいな、と思います。
同じ体験をしても、「私はこんな不幸な人生を送ってきたんだ」だけだと、やっぱりつらいと思うんですよね。
すごい経験をしたからって、誰もが脚本を書けるわけじゃなくて、「いかにそれを客観的な視点に落とし込めるか」ということが、書ける人と書けない人の差なんじゃないかな、と。
それは、神戸さんが書いた本『障害を持つ息子へ』の時も、同じことを思いました。
読者が「これは他人事じゃない」と思える方は、実は著者の距離感だと思っているんです。
神戸:
でも、エネルギー源は、「やろう!」と声をかけてくれた編集者です。
小宮さんのところから映画と本が生まれてきて、両方ともすごい作品になりましたね。
小宮:
本当に。
自然発生的にSNSで話題になって「面白かった」と言ってくれる人が、若い世代も結構年配の方もいて、それがうれしいです。