■“演説の名手”の野田元総理にスピーチの秘訣を聞いてみた

10月下旬、国会で行われた野田佳彦元総理による安倍晋三元総理に対する追悼演説。終わっても拍手が鳴りやまず、与野党を超えて称賛の声が相次いだ。
政界屈指の“演説の名手”である野田氏にスピーチの秘訣を教えてもらおうと、永田町の議員会館事務所を訪ねた。

まずは追悼演説の苦労話から。オファーが来てから最初の1週間は原稿用紙に向き合ってもなかなかストーリーが作れない状況が続いたという。出来上がった原稿も演説当日の午前中まで推敲を重ねたそうだ。
野田氏によると、演説やスピーチには、まずは相手がその話に興味を持ってくれるための「つかみ」が必要だという。
「『つかみ』はどうしてもウケ狙いになるんだけど、聴衆をただ喜ばすだけじゃなくて、いかに印象に残る言葉を選ぶかの真剣勝負です。そこに油断があると失言しやすい」
そのうえで、スピーチには3つの重要な秘訣があると明らかにした。
■野田元総理が明かすスピーチ「3つの秘訣」と「タブー」
1 場数を踏む
「マイク持ってどれだけ場数を踏んできているかしかないんですよ。私には地盤(組織)、看板(知名度)、カバン(資金力)がなかったから、県議の時から街頭に立って、どうやって言葉を出すと通り過ぎる人の足が止まるのか、話を聞いてもらえるのかとか、苦労しながら失敗しながら何回もやってきたんです。場数を積めばスピーチは上手くなる」
2 言葉を紡ぐ力
「言葉を紡ぐ力は常に大事だと思いますね。自分の場合は『かわら版』というブログを毎週書いて自分なりに推敲して自ら街頭で配っている。それを基本にスピーチをすることが多い。しゃべりながらどういう語句にしたらよいのかとか常に改善していく。その繰り返しが言葉を紡ぐ力なんですね」
3 空気を読む
「その場の空気に合わせて言葉を発信する力って大事です。スピーチをどうやって聞いてもらうのか。例えば、国会の追悼演説の冒頭、私はお辞儀してからしばらく喋っていないんですよ。与党も野党も固唾をのんで耳を傾けているのがわかったところで入っていった。場の空気を読む、または空気を作ることなんですね」
そして、演説やスピーチにはやはり口にしてはならない「タブー」があるという。
「タブーはやっぱりあると思いますね。その最たるものは人の命に関わることや、病気や身体的な特徴に関わること。私も追悼演説の中で、安倍さんのことを『おなかが痛くなってはダメだ』って言ったことへの反省を述べましたけど」
話を聞いてみて、あの追悼演説には街頭演説で積み上げてきた様々なノウハウと野田佳彦と言う政治家の生きざまが凝縮されているように感じた。
野田氏は自らのことを、「ゆずとかコブクロのようなストリートミュージシャンと同じような“ストリートから生まれた政治家”だ」と言う。その体験的なスピーチの秘訣は、演説に自信のない政治家だけでなく一般の人たちにも大いに参考になるのではないかと思う。
TBSテレビ報道局解説委員 緒方誠

















