「僕にもちょっとある」 内澤が共感する『DOPE』の“異能力”世界

長谷川:今回、『DOPE』の劇伴を手がけるに当たって、どんな作品だと思われましたか?
内澤:僕が一番初めに思ったのは、“異能力”って非日常的な話ではあるのですが、僕にもちょっとそういうところがあるなと思って。僕は音楽の才能があるとは自分では思っていないんですけれども、突然音楽が聴こえたり降ってくるような瞬間があったりするんですよ。情景が思い浮かぶような。小さい頃からなんです。
長谷川&スタッフ一同:へえ(驚きの声)!
内澤:で、小さい頃に、そのことについてしゃべると、「またお前かっこつけて」みたいな、すごくばかにされていたんですよ。だから、普段ほかの人には、それは言わないほうがいいんだ、ってずっと封じていたところがあって。この作品を見た時に、異能力で特別視されるみたいな、人と違う、みたいなレッテルを貼られたりっていうところが、すごい似ているなと思って、共感できる部分がありました。
長谷川:そこは今回、僕がやりたかった大きなテーマでもあったので、そのお話を今知って、内澤さんがそこにリンクしてくれたことは、本当にうれしいなと思います。
内澤:今回、劇伴を作るに当たって長谷川さんと3時間ずっとディスカッションした時も、やっぱり思い浮かんだりしました。それで言うと、台本を読んで、映像の部分はどうなるんだろうと、VFX(視覚効果)とか、きっとめちゃくちゃ時間がかかるんじゃないか、予算かかりそうだな、みたいなことまで思っちゃったりします。
長谷川:今、ちょっともう怖くて(笑)。
内澤:長谷川さんからラフも見せてもらったりして、「このシーンのこのカメラワークは、最初から完成形が見えていて全部決められた状態で撮っているんですか?」と聞いたら、そうだとおっしゃっていて、すごい緻密に計算して映像を撮っているんだなっていうのは思いましたね。経験がないと無理でしょうし、僕では見当が付かなかったです。
長谷川:(ひと足早く完成したVFXの映像を見せながら)これ、冒頭の火を使うドーパーのシーンなんですけど。
内澤:すごい!! これは時間かかるなあ…と思いますね。
長谷川:(話に戻り)それで内澤さんが先ほど「曲が降ってくる」みたいにおっしゃっていましたけど、僕も“降ってくる”瞬間があって、「キター」って。僕の場合は、セリフとか、企画ですね。内澤さんにお願いしようと思ったのも、やっぱり降ってくるような感じで、「このタイミングだー」って。
内澤:もういろいろと、すごい楽しみです。僕の中では、ジウにも注目しています。めちゃくちゃIQが高くて謎が多い。
長谷川:内澤さんが作ってくださったジウの音楽も、イメージ通りです。僕はうれしくて、デモとか「これめっちゃかっこいいですよね?」って役者さんたちに先に聴かせちゃうんですが、井浦さんに聴いてもらった時は、「どうしよう、想像よりジウが壮大な感じ(笑)」っておっしゃっていて。
内澤:ええ! そんな!
長谷川:納品されて、速攻で井浦さんに送って。そしたら「メインテーマとジウのテーマは、台本読むとき必ずかけます」とおっしゃっていて。
内澤:えええ、すごい! でも作り手としては、それが演技の役に立っているかもしれないと思うと、めちゃくちゃありがたいですよね。