広がる保護活動と、“相性”の大切さ

『初恋DOGs』でも描かれる保護犬・保護猫の存在。その背景には、全国的に高まる保護活動への関心がある。有藤先生が院長を務める日本動物医療センターでも、各地の施設と連携しながら積極的に取り組みを進めている。
「当院の分院がある宮古島(沖縄県)では、以前は野犬が殺処分される状況でした。今では、社会貢献の一環として、現地の保護団体と連携しながら去勢・避妊手術や譲渡活動を行っています」。
その活動は岩手県のシェルター支援など全国に広がり、ワクチン接種や血液検査など、医療面からのサポートも欠かさない。
「最近では保護活動への理解も広がってきて、譲渡会などペットショップで“買う”以外の選択肢も当たり前になりつつあります。もちろん全ての人が里親になることを選ぶ必要はありません。でも、選択肢が増えたこと自体が大切だと思っています」。
その上で、先生が強調するのは多頭飼いを考える際の「相性」の重要性だ。
「保護犬や保護猫を迎える際には、先住犬や先住猫との相性を見ることがとても大事です。実際に数週間一緒に過ごして様子を見ることもしています。合わない個体はどうしても合わない。でも反対に、すぐに仲良くなるケースもあります」。
動物たちも人間と同じで、飼い主にとっても「1匹でいるのは寂しいのかな」などと感じる場面もある。有藤先生の家でも猫を2匹飼っていて、1匹の時と比べて活動量や運動量が格段に増えたという。
「たまに小競り合いをしたり、じゃれ合ったりしている様子を見ると、良い刺激になっていると感じます。全然ストレスがない状態で誰にも干渉されず、ただ寝ているばかりの生活が本当に良いかというとそうでもない。生活の中には、必要最低限のストレスもあったほうが良い場合もありますからね」。
そして何より、動物同士の付き合いには“自分で相手を選べる自由”がある。
「動物って飼い主を選べないじゃないですか。でも、動物同士なら選べる。そういう意味では、動物同士の関係性というのも、その個体にとってはすごく大事なことだと思います」。