歴史否定の暴言を繰り返す本土政治家

子供たちの上を軍用機が飛ぶ日常 ©2025 映画「太陽の運命」製作委員会

神戸:沖縄戦の悲惨な出来事。そしてアメリカの占領下に長く置かれたということ。その苦しみが保守も革新も含めて、沖縄にはあるわけですよね。そこに対する思い入れが、戦争をしていた世代の政府中央にはあったように感じているんです。

佐古:かつては橋本龍太郎首相や梶山静六官房長官のような、沖縄を理解してくれている人がいた。今はそういう人がいない。大田さんも翁長さんも、同じ名前を出したことがあるんです。さらに、翁長さんは、「政府が沖縄に対してやろうとしていることは昔も今も一緒だ。しかし、かつては、さまざまな歴史上のことを踏まえて、『沖縄に対して申し訳ない』と。そう接してくれるから、我慢ができたんだ。でも今はそれがない」ということを言っていたのです。

翁長も政権と真向かった ©2025 映画「太陽の運命」製作委員会

神戸:とんでもない暴言を自民党の西田昌司議員が言い、大騒ぎになりました。参政党の神谷宗幣代表も。

佐古:歴史を否定する発言が、ずっと出続けている。沖縄にとってみれば、さまざまな住民の貴重な証言を長きにわたって積み上げてきた上で、例えば「軍隊は住民を守らない」という大切な教訓があるんですよね。歴史を否定する昨今の発言は、まさにその教訓を否定し、攻撃する発言としか言いようがないと思います。

神戸:「ペシミズム」という言葉が、映画の中で出てきました。あまりにいい加減な本土の態度に疲れ果てて、展望がもう見えなくなっている悲しい現実も、一部描かれていたかと思います。

佐古:その言葉は、まさに筑紫哲也さんが残した言葉です。『NEWS23』で筑紫さんは毎日、「多事争論」というコーナーを持って、一つコラムの形でしたけれども、今回その言葉をこの映画にも残したいと思いました。

神戸:当時、私もテレビでこの「多事争論」を見たので、ちょっと涙してしまいました。筑紫さんの思い、沖縄の人たちの立場が未だに解決されないまま来ていることを非常に考えさせられる、『太陽(ティダ)の運命』。7月18日、福岡市でも公開されます。

佐古:今年3月22日に沖縄で先行公開をして、全国を回っている旅の途中でもあるんですが、ようやく福岡にたどり着きました。翌19日にはKBCシネマで舞台あいさつをすることになっています。劇場でお待ちしておりますので、ぜひ皆様にお目にかかりたいです。

沖縄の祈りは届くのか ©2025 映画「太陽の運命」製作委員会

◎神戸金史(かんべ・かねぶみ)

1967年生まれ。学生時代は日本史学を専攻(社会思想史、ファシズム史など)。毎日新聞入社直後に雲仙噴火災害に遭遇。東京社会部勤務を経てRKBに転職。やまゆり園事件やヘイトスピーチを題材にしたドキュメンタリー映画『リリアンの揺りかご』(2024年)は各種サブスクで視聴可能。ラジオドキュメンタリー『家族になろう ~「子どもの村福岡」の暮らし~』(2025年)はポッドキャストで公開中。