9月開催の東京2025世界陸上の最重要選考競技会である日本選手権が、7月4~6日に東京・国立競技場で開催された。6日に行われた男子200m決勝は、鵜澤飛羽(22、JAL)が20秒12(無風)の日本歴代4位タイで3連勝し、世界陸上代表内定を決めた。この種目では1975年の友永義治(4連勝)以来の快挙となった。日本記録の20秒03(03年・末續慎吾)更新と、日本人初の19秒台への記録的な期待もあるが、今大会の鵜澤は“強さ”を意識して戦っていた。

「鵜澤なら負けないだろう」というオーラを作る

日本選手権の3連勝は、男子200mにおいては簡単なことではなかった。末續慎吾(優勝4回)、高平慎士(同5回)、藤光謙司(同2回)、飯塚翔太(34、ミズノ。同4回)、そしてサニブラウン・アブデル・ハキーム(26、東レ。同2回)と、2000年以降のこの種目で活躍してきた選手の誰も達成していない。

「去年優勝してすぐに3連勝ということを先生(谷川聡筑波大監督)から言われて、そこはずっと自分の中にありました」

優勝記録は23年が20秒32(向かい風0.2m)、24年が20秒43(向かい風0.2m)、そして今年が20秒12と上がってきた。優勝タイムだけでなく2位選手とのタイム差も、0.23秒、0.14秒、そして今年が0.41秒と最大になった。

「3連覇することによって周りの、自分に対する見え方も大きく変わってくると思うんです。鵜澤飛羽は強いぞ、と知ってもらえたと思いますし、来年以降も自分は強くあらなければいけない。鵜澤なら負けないだろう、というオーラや雰囲気を作っていきます」

国内で負けない状態を作っておくことで、世界への挑戦に集中できる。

日本選手権のタイムへの自己評価は?

3連勝という部分は自身でも評価できたが、世界と戦うにはタイムが不満足だった。
鵜澤は5月3日の静岡国際優勝時に20秒05(追い風2.1mで参考記録)を、予選では20秒13(追い風0.8m)の日本歴代4位タイをマークし、昨年までの自己記録20秒23(23年)を大きく更新した。5月末のアジア選手権も20秒12(追い風0.8m)で2連勝。そして日本選手権の20秒12(無風)である。

「20秒1台を平均して出せるのは強くなっている証拠ですが、20秒12では世界では戦えません。20秒0台、19秒台は出していかないといけないところだったんですが、いや、厳しいですね。自分が狙っているパフォーマンスをここぞという時に出せないのは、自分の弱さです。今後を考えても良くない点が浮き彫りになってしまいました」

最終的には重要な試合で記録を出すことで、順位という結果になって表れる。だが個々の試合に臨むときは、記録か試合のどちらかを意識することが多い。

静岡国際のレース後は、19秒台を出せなかったことをずっと反省していた。しかし2連勝したアジア選手権から帰国時には、「タイムは気にしていませんでした。体の調子が良くなかったんですが、そういうときでも勝ち続ける、強さを証明することがすごく大事だと思っています」とコメントしていた。日本選手権でも予選終了後には「タイムはどうでもいいので、強さを証明することが大切になってくる」と話した。

国際大会や日本選手権など大きな大会前は、記録は意識せず、勝つには何をすればいいかに集中する。しかし大会後には数字で表れる記録も、世界で戦うための走りができていたかを自己評価する判断材料になる。19秒台が出なければ悔しがるが、“19秒台だけ”を期待されるのはちょっと違うな、という気持ちになるのだろう。