■「“ドンバスの王様”を目指している。金儲けのためにドンバスの製造業の実権を握りたいのだ」
プリゴジン氏を知る元傭兵に直接話を聞いた。2015年から4年間『ワグネル』に所属し、シリア内戦に参加している人物である。
『PMCワグネル』元傭兵 ガビドゥリン氏
「シリアでロシアの将校が宣言した“流血の少ない作戦”、これを支えスローガンを実現させたのは傭兵だ。傭兵の死傷者は公式な死傷者には含まれない。そのおかげで将校の約束通り”流血の少ない作戦”で勝利できたとロシア国民が思うようになった。しかし事実は違う。傭兵の死傷者数はロシア兵の数倍だった。特段の才能もなく戦術も知らない将校たちの権威を維持するために傭兵は使える。」
シリアではロシア軍の影の存在として使い捨てにされる立場だった『ワグネル』が、今回のウクライナでは、ロシア軍側から作戦の調整を求められるようになったと言う。傭兵部隊が正規軍と対等な扱いを受けるまでになったからなのか、プリゴジン氏は今年9月、初めて自らがワグネルの創設者であることを認めた。インタビューに応じたガビドゥリン氏は、プリゴジン氏の補佐官を務めたこともあるという。
『PMCワグネル』元傭兵 ガビドゥリン氏
「プリゴジン氏は大変厳しい上司だ。周りの人や部下に対しては乱暴な態度に近い。でもクリエイティブな人でもあり、いろんなアイディアを生み出す。社内の勲章もデザインもする万能な人。最近の彼の活動の最も重要な目的は自己防衛だ。この戦争で政権内部の争いが激化した。プリコジン氏の積極的な活動によってシロヴィキの中で作られた敵も多い。今の活動は自分の地位を強化するため、政敵に潰されないための活動だ。傭兵業のワグネルは、彼のビジネスの一部に過ぎない。プリゴジンは“ドンバスの王様”を目指している。金儲けのためにドンバスの製造業の実権を握りたいのだ。」
影の存在からロシア軍と対等な立場に…そして、非合法の傭兵業から表社会のビジネスへの進出を狙う。まさに表舞台に立って活動を始めたプリゴジン氏ですが、SNSに投降したコメントが波紋を広げている。