2種目挑戦のためにしてきたトレーニングは?

だが実際のところ、特性が異なる2種目を行うのは簡単なことではない。今季は世界室内陸上こそよかったが、4月のダイヤモンドリーグ厦門大会110mハードルは13秒39(追い風0.3m)で8位。2位には順大の後輩で、パリ五輪5位の村竹ラシッド(23、JAL)が入っていた。5月中旬の国内レースも13秒48(向かい風0.6m)と不本意な結果に終わった。

「どちらも技術的なものが噛み合っていなくて、何を改善したらいいんだろう、と迷走していました」

5月18日のGGP走幅跳は、8m02(追い風0.3m)の3位と悪くなかったが、踏切脚の踵を痛めてしまった。しかし今年の日本選手権の開催時期が7月と、例年より1~2週間遅くなったことも幸いし、立て直す時間があった。

「ハードルは最近になって、こういう感覚でいけばいいとわかってきました。インターバルの刻む意識の持ち方であったり、力みすぎないで1台目から10台目まで同じことを繰り返せばいいことであったり。走幅跳の踏み切りはまだ完全にできるかわかりませんが、助走練習は結構まとまってきて、(踏切補助の)ロイター版を使って軽く踏み切って、空中動作の確認もやっています。(課題だった)着地も良い感じでできています」

2種目挑戦に踏み切れたのは、客観的には難しいことであっても、泉谷の中では両立できる感覚があったからだ。前日会見では「技術的に難しいと感じたことはない」と明言。それよりも「GGPで踵をケガしてしまいましたし、肉体的、体力的に難しい」と言う。

「冬期練習で練習量を増やしたり、練習する日数を増やしたりして、単純に体力を付ける、土台を大きくする感じで取り組んできました」

それでも実際のところ、2種目を行うことで故障のリスクが大きくなるのは避けられない。前日会見の最後に泉谷はこう話した。

「もちろんリスクもあるのですが、単純に自分がやりたいから、という気持ちが大きいですね。2種目挑戦が今後につながることもあると思いますし、自分にしかできないと思っているところもあります。それをすること自体も目標にして頑張りたいと思います」

大会初日に110mハードルの予選と準決勝、2日目に110mハードル決勝、3日目に走幅跳決勝と、元気に競技をしていく泉谷の姿は、見る者にも元気や勇気を与えるに違いない。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)