2人のレース展開と、世界陸上代表入りの可能性は?

エントリー選手の上位2人の自己記録が、史上最高レベルとなる今年の日本選手権。レースはどう展開されるだろうか。

これまでのレースパターンを見る限り、200mは松本が先行しそうだ。静岡国際のように松本を前に見て走れば、経験の少ないフロレスは走りやすい。だが昨年の国民スポーツ大会300mでは、フロレスが松本の2つ外側レーンだった。それでも200mまでをしっかりと走って、最後の直線で松本に競り勝った。

どのレーンに入るかが勝敗に影響する可能性も否定できないが、それよりもレース戦術の成否が勝敗を決するのではないか。静岡国際では200m以降でフロレスが松本に追い着き、300mでは並んでいた。200mまでを楽に走って差が小さかったことで、その走りができた。

一方の松本は静岡では、200~300mの走りがそこまで良くなかったが、アジア選手権ではその課題が克服できていたという。

「静岡国際は前半で出す走りができた分、200mから300mが上がってきませんでした。前半でスピードコントロールをしつつ、200mから300mのところを切り換える部分を、ずっと練習してきました。それをレース展開に落とし込むことが、アジア選手権は予選からできたことが大きかったです」

決勝は1つ外側の選手が松本のレーンに入ってきて、接触を避けながら追い抜いた。それがなければ51秒台は出ていただろう。200~300mの走りは、200mまでの走りが関わってくるのは松本も同じだが、そこを意識してきた年月は長い。日本記録保持者の丹野麻美がチームの先輩で、丹野との比較で200~300mを課題にし続けて来たからだ。対決の行方は予断を許さない。
           
女子400mの五輪&世界陸上代表は、09年ベルリン世界陸上の丹野を最後に途切れている。参加標準記録は50秒75なので難しいが、Road to Tokyo 2025(標準記録突破者と世界ランキング上位者を1国3人でカウントした世界陸連作成のリスト)では現在松本が43位(5レース平均1200点)につけている。出場選手枠が48人なので油断はできないが、日本選手権ともう1レースで高得点を獲得すれば出場資格を得られそうだ。

フロレスは現在5レース平均1135点。48位の選手の1172点を逆転するには4レースで高得点を獲得する必要がある。ハードルは高いが不可能と決めつけるのは早い。

しかしフロレスには混合4×400mリレーでも代表入りの可能性がある。日本陸連が定めたリレー候補競技者基準記録の52秒30は突破済み。日本チームが出場資格を得れば、基準記録突破者から代表が選ばれる。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)