少しずつ、少しづつ…

行き詰まっていた作品制作も、繰り返し練習したことでなんとか締め切りまでに間に合わせることができました。完成品を真っ先に見せた相手は、弟でした。

弟「縫い目、肌に優しいね。ホントに。縫い目が外に出ているから」

完成した作品


大喜びする弟を見ながら、柔らかな表情を浮かべていました。
作品は学校を通じて大会に応募するため、学校に向かう奏さん。登校するのは実に4ヵ月ぶりです。玄関では校長先生が「こんばんは元気にしてましたか?」と声をかけてくれました。作品の進捗を気にかけていた先生たちの前でお披露目です。

奏さん
「これがエイのシャツです」
先生たち
「えい?」「へー!かわいい」「魚シリーズや」
校長先生
「これ全部ポケット?」
奏さん
「はい、弟がエラを表現したいと言って」
校長先生
「ひとつひとつ丁寧に作ってあるね」
担任の先生
「ポケットが服の裏側では分からないようになっているんだね。ちゃんと弟君の肌に当たらないように」

驚きの声が飛び交う


飛び交う驚きの声。苦労した部分を褒められ、奏さんの顔に笑みがこぼれます。

兼六中学校 可長俊太 校長
「いまの中学生からの発想を超えるものは持っている子だなと。色んな可能性を秘めているものを持っている子だなと改めて感心させられました。全部ではないんですけども、少しずつ登校して、そういったところに少しずつ参加してくれればいいのではないかなって。」
奏さん
「自分で言うのもなんですけど、この年頃の女子ってみんな群れたがるじゃないですか。同級生の同調圧力が怖くて、それで行けていない感じですかね。驚いたり喜んだり、してくれるのはやっぱり嬉しいですね」

「驚いたり、喜んでくれたりするのは嬉しい」


周囲に受け入れてもらえることが少しずつ自信になっているようです。奏さんはこれからも、誰かが喜ぶ作品を作り続けます。