意識戻った夫が初めて伝えた言葉は「さわるな」

発症当初は、意思疎通はおろか、意識が戻らない日々がおよそ3か月も続きました。

意識が回復した明洋さんに言語聴覚士が文字盤を試してみると――。

妻:高倉美恵さん
「名前を聞いたら目で名前を追って教えてくださったので『言葉が分かられてますよ』『記憶も確かです』と。本当に小躍りするじゃないですけど、それまではこの先どうなるかも本当に分からなかったので」

喜んだ美恵さんに対し、明洋さんが文字盤で初めて伝えた言葉は、『さわるな』でした。

妻:高倉美恵さん
「それまですごい足とかマッサージを一生懸命しているつもりだったんですよね、毎日行って。それが『さわるな』なんだと思って。すごい嬉しいというのと、これはちょっと私、怒ってもいいんじゃないかと思って、それまでは腫物に触るみたいな感じの部分があって、『さわるなってなんじゃこら』と言えたのが私としては嬉しかった」

夫は『殺されると思った』 命がけの警告

しかし、体が動かない明洋さんにとって、「さわるな」は命がけの警告でした。マッサージによって胃の栄養剤が逆流し、肺炎を起こす危険があったからです。

妻:高倉美恵さん
「夫は『殺されると思った』と。私がそうするので子供も真似して、手が開いたら足をマッサージするみたいなことまでやり出したから、『ほっといたら殺される』と思った」