書店員だった妻 文字と漫画で日常を綴るように

24時間介護が必要になった夫との生活。元々書店員で本が大好きな美恵さんは、その体験を文字と漫画で表現しています。

妻:高倉美恵さん
「自分的に字だけ書いていると絵で補完したくなっちゃうんですよね。漫画だけ描くと字で補足したくなって自分のスタイルとしては両方がいいなみたいに」

新聞での連載をまとめ、10年間の介護体験を綴った『眼述記』として、今年2月に出版されました。

ベッドから車椅子への移動も、美恵さんがリフトを用いて1人で行います。

この日常を、美恵さんは、4コマ漫画も交えながら、ユーモアいっぱいに描いています。

左を向いたらイエス、右を向いたらノー手作りの文字盤で会話

意思疎通や会話は透明な文字盤を使って行います。文字盤を明洋さんの顔の前にかざし目の動きを読み取ります。

妻:高倉美恵さん
「手を伸ばす?」

文字盤は2種類。「暑い」「寒い」「手のばして」「ごちそうさま」「ハミガキ」など、日常頻繁に使う19種類の言葉を書いたもの。

そして50音が書かれたもの。

妻:高倉美恵さん
「身体の訴えが頻繁に起こる、体調を訴える言葉を書いたものを先にやって、これに当てはまらなければ50音盤に取り換えます。左を向いたらイエス、右を向いたらノー、上を向いたら『用事があります』という意味です」

50音盤は、携帯電話のフリック入力の並びになっています。

妻:高倉美恵さん
「あ・い・う・え・おと順番に呼んでいって、該当するところでイエスを向いたらその言葉だな、と分かる仕組みです。だからこれはフリック入力の並びになっています」

美恵さん、かざした文字盤と夫の目の動きを瞬時に読み取りました。

妻:高倉美恵さん
「『目を拭いて』。分かりました」

ちなみに、頻繁に使う文字盤の中には「ワイン」という単語もあります。

聞くと、夕食時におちょこ一杯のワインをたしなむことがあったから。

今は、夕食時のワインがコーヒーに変わり、夫婦の間では「ワイン」を指すと「コーヒー」ということになっているそうです。