極北の地、グリーンランドでは気候変動で伝統的な暮らしが影響を受けていますが、温暖化はむしろプラスだ、という人たちもいます。脱炭素社会に必要な資源が豊富に埋まっていて、世界からの注目も高まっていますが、そこに住む人たちはどんな思いを持っているのでしょうか。
■気候変動で人々の生活に影響が 世界最大の島グリーンランド
デンマークの自治領で、世界最大の島、グリーンランド。大部分は北極圏内にあり、私たちが訪れた夏は毎晩白夜だった。わずか5万6000人の人口の約9割を先住民イヌイットが占めるこの島は今、気候変動の様々な影響を受けている。

西部の町、イルリサット郊外の野原には犬ぞり用の犬で、グリーンランドにしかいない「グリーンランド・ドッグ」がたくさん繋がれていた。代々犬ぞりを使ってきたナクサクさんは現在12頭を飼育している。彼は犬ぞり観光のシーズンの到来を告げる雪の降り始めが遅くなってきているという。
ナクサクさん
「気候変動は感じます。2021年は12月まで雪が降りませんでした。だから犬ぞりを走らせはじめるのもそのぶん遅れました」

冬が短くなればなるほど、経営は圧迫される。仕事がなくてもエサ代だけかかるからだ。
ナクサクさん
「冬が短くなっていけば、飼育する犬の数を減らさざるをえないかもしれません。エサ代が馬鹿になりませんからね」
一方で、気候変動を必ずしも否定的に捉えていない人たちもいる。
港に工場を持つ「ハリバット・グリーンランド」社は名産のカラスガレイの加工を行う。

ハリバット・グリーンランドCEO エリック・シベルトセンさん
「8割はアジア、主に中国に輸出していますが、日本にも出してます。エンガワの部分ですね」

漁師たちは昔から2つの方法でカラスガレイを捕ってきた。小舟で直接釣るやり方と、犬ぞりで氷の上を行き、氷に開けた穴から糸を垂らして釣る方法だ。しかしこれも気候変動で変化してきている。
「私が子供の頃、冬には海が凍ったので漁師たちは船を出せませんでした。でも最近は一年中水面が見えます。だから、今や漁師たちはずっと船で漁に出ることができるのです」
「今年は大きなカラスガレイがたくさん捕れました。大物はアイスフィヨルドにいるのですが、気候変動のおかげで小型の船が入れるようになったんです」
アイスフィヨルドとは氷で埋まった入り江だが、温暖化で漁がしやすくなった。シベルトセンさんは伝統的な漁法を捨てることはないとしつつ、気候変動も利用したいと考えている。
「気候変動が漁師たちの可能性を広げるならそれも支援します。二者択一ではないですからね」














