■危険と隣り合わせ…氷河観測の最前線
グリーンランドは、気候変動研究の最前線でもある。特に地表の8割を覆う“氷床”と呼ばれる氷は、溶けだして海面上昇を招くため研究者が世界中から集まる。

ただ、苦労も多い。普段はデンマークで研究しているコーガン上席研究員は、あるトラブルを解決するためグリーンランドにやってきた。
デンマーク・グリーンランド地質調査所 上席研究員 ウィリアム・コーガンさん
「8か月間動いていない観測ステーションに行きます。バッテリーがダメになったんでしょう。原因を特定して、再稼動させるんです」

氷床に設置された観測ステーションの1つがデータを送信しなくなっていた。実際に行って直すしかない。万が一遭難した時に備え、ヘリには様々なものが積んであるという。
グリーンランド航空 操縦士 クリスチャン・グルーズデルさん
「テント、調理器具、食料、ライフル。(Q.なぜライフル?)ホッキョクグマ用だね」

気候変動研究の基礎となる様々なデータを集める観測ステーションは広大な氷床にたった20基しかない。早く直したいところだが、離陸してしばらくすると雲が出て来た。視界の悪化でこれ以上進むのは危険、この日は断念した。
■“1秒に1万トン”溶けるグリーンランドの氷床 2150年には東京の海面が147センチ上昇!?
イルリサットの街から20分ほど歩き、モダンなデザインのビジターセンターの屋根に上ると遠くに世界遺産にも登録されているアイスフィヨルドが見えてくる。
ここはアイスフィヨルドの先端部分。いわば河口にあたる。世界で最も多くの氷山が生まれる場所だとされ、かのタイタニック号が衝突した氷山もここから出て行った可能性が高いという。


このアイスフィヨルドを生んでいるヤコブスハブン氷河は今、どんどん後退している。


コーガンさんはそのスピードをこう表現する。
「現在、グリーンランドの氷床は1秒に1万トン溶けています。90年代から急激に増え、今も増え続けています。明らかに温室効果ガスによるものです」
グリーンランドの氷が溶けることによって起こる世界的な海面上昇は、日本でも水害のリスクに晒される人口を大幅に増やすことになる。
コーガンさん
「日本周辺の海面上昇のスピードは世界の平均よりやや速めです。パリ協定が守られたとしても、2150年には東京の海面は77センチ上昇。何も対策をとらなければ、海面は147センチ上昇します」














