■大国のはざまで「独立」は

では、グリーンランドは今後も欧米陣営に居続けるのだろうか。

グリーンランドはデンマークからの独立志向が強い。自治権はあるものの世論調査では約3分の2が独立に賛成している。

海岸に、地元の政治家や活動家に集まってもらった。
インタビューを行ったのは午後9時からだが、とても明るい。

自治政府の閣僚を歴任したペール・ブロベルグさんは国民感情をこう説明する。

「ここは未だにデンマークの植民地です。グリーンランド人のアイデンティティが必要ですし、未来は自分たちで決めたいんです」

さらに、デンマーク人からは見下されることも多いという。

活動家 リリ・ケミニツさん 
「デンマークの人たちは私たちを『酔っ払い』とか『問題ばかり起こす』とか『無学だ』とか言うんです」

そんなグリーンランドに、近年アプローチを強めてきたのが中国だ。観光業の拡大に不可欠な空港の拡張工事や南部のレアアース鉱山開発に参画しようとしたが、アメリカの横やりや住民の反対で頓挫した。

それでも中国は、温暖化で氷が溶けることで通行が可能になる「北極海航路」を軸に、北極圏に進出する意志を明確にしている。これに対して、アメリカではこの人が「グリーンランドを買ってもいい」と発言。

トランプ大統領(2019年8月当時) 
「やれることはいろいろあるでしょう。要するに巨大な不動産取引です」

安全保障面から言えば、グリーンランドはアメリカとロシアのちょうど中間に位置し、弾道ミサイルが発射された場合にはグリーンランド北部にあるアメリカの基地が探知の上で重要な役割を果たす。トランプ氏の発言は「グリーンランドには手をだすな」というメッセージでもあり、突拍子もないことではないのだが、やはり言い方は少々センセーショナルだった。

発言をどう思ったか、聞いてみた。

進歩党 インガ・マルクセンさん
「聞いたときは笑いました。グリーンランドも50秒間くらいは有名になるかなと思いました」

一方でブロベルグさんは、当時デンマーク政府が「グリーンランドは売り物ではない」とリアクションしたことについて、少し皮肉交じりにこう語った。

「デンマークはいつも“独立なんて無理だ” “君らと一緒にやる国なんて無い”と言っていたんです。そこへトランプが“大金を払うよ”と言ったんですからね。トランプと気候変動が我々にスポットライトを当てたんですよ」