■裁判員裁判の争点 “妄想型統合失調症”
宮西被告の弁護人は「公訴事実自体は争わない」と述べた上で、「心神喪失状態のため宮西さんの行為は罪とならない」と無罪を主張。
争点は“妄想型統合失調症”だった宮西被告の刑事責任能力の程度です。
冒頭陳述で検察は、「かねてよりコンビニで女性店員が自分を避けるという妄想を抱いていた被告が、『異常』が解消しないと死に至ると考え、コンビニで殺傷事件を起こして警察官に射殺してもらおうという考えから犯行に至った」と指摘しました。

ただ、検察は当時宮西被告は「心神耗弱」状態だったとして刑事責任能力について限定的に問えると主張。裁判員に対して「犯行時に正常な部分が、どの程度作用していたのか判断してほしい」と述べました。
一方、弁護側は「犯行動機は被害妄想であり、被害妄想抜きには事件を説明できない」として、宮西被告は犯行時「心神喪失」状態で無罪だと主張しました。
検察側が提出した証拠には、統合失調症を患っていた宮西被告の孤独な生活実態も浮き彫りになりました。
■宮西被告が抱えていた孤独
北海道函館市で、電気店を営む両親のもとで生まれた宮西被告。地元の工業高校で電気工事士の資格を取得して、卒業後は東京で働くも、人間関係の悩みや体調不良を理由に2年ほどで退職しました。
その後は実家の電気店を手伝っていましたが、2011年に父親が亡くなってからは、トラック運転手などの職を転々としていました。
母親の供述調書によると、宮西被告の様子が「明らかにおかしくなった」のは、2023年ごろ。
母親と2人で暮らす函館市内の実家で、「テレビから声が聞こえる。テレビ局に言って放送を辞めさせて来い」と母親に怒鳴ったり、「俺を変な目で見ているやつがいる」と突然、怒り出したりするようになったといいます。

「けだもののようなものすごい顔つき」に恐怖を感じたという母親。
被告に病院の受診をすすめるも、聞き入れてもらえず、仕事もしないため、きちんと働かないのなら実家を出ていくよう伝えたといいます。
すると、宮西被告は「札幌で働く。もう函館に帰ることはない。俺のものはすべて処分してくれ」と母親に伝え、ほとんど絶縁したような状態で実家を飛び出しました。
2023年9月ごろのことでした。