福島県内で長く愛されている老舗にスポットを当てる「老舗物語」今回紹介するのは、「手打ちうどん」が自慢の二本松市の食堂。80代の女性店主が、1人で店を続けるわけとは。
『針道のあばれ山車』で知られる二本松市・針道。
毎年、秋には山車がぶつかり合い熱気を帯びる目抜き通りの一角に100年続く食堂があります。
「川崎屋」。かつては結婚式場や民宿も併設していて、広い厨房が当時の面影を残しています。先代の頃から50年以上、店に立ち続けてきたのが鴫原佐智子さんです。
--鴫原佐智子さん(川崎屋)「高度成長期のとき、景気良かったからすごく忙しかった。そこに役場があって、お昼っていうとここに入りきれないほどのお客さんが来た。」
--鴫原佐智子さん(川崎屋)「高度成長期のとき、景気良かったからすごく忙しかった。そこに役場があって、お昼っていうとここに入りきれないほどのお客さんが来た。」
早朝から仕込んだ生地を年季の入ったローラーで何度も伸ばし、均等に切ったら、ここからが佐智子さんならではの製法です。
--鴫原佐智子さん(川崎屋)「うどんを“ぶつ”んです、この長さが面白いように伸びる。」
この工程こそが、うどんに長さとコシを与えてくれると言います。
看板メニューは、つゆで煮込んだ豚バラとネギが乗った「名物肉うどん」です。
--お客さん「コシがあって美味しかった。(川崎屋のうどんは)おかゆ替わり、もう60年くらい食べている。(店も)うどんのように長く続いてほしい。」
針道で長きにわたって親しまれ続ける川崎屋。しかし、今年に入り店にとっても、佐智子さんにとっても大きな出来事がありました。
--鴫原佐智子さん(川崎屋)「父ちゃんが77歳、喜寿。私が80歳で傘寿、ちょうど節目なの。そして金婚式で50年っていう3つの節目が重なった。この時はかなり痩せていて、背広がガホガホだって。」
店主で夫の康浩さん。今年4月、79歳でこの世を去りました。
--鴫原佐智子さん(川崎屋)「この1年間、病院に通ったの。毎月。2人で病院まで行く30分の時間が、おにぎり作って、車の中で食べたりして、今思えば楽しかったね。なんだろうね、この寂しさっていうのは。歌の文句によくあるように胸が裂けそうだとか、言葉で表せば、そういう状態だな。」
先週、佐智江さんは店の暖簾を新しくしました。
--鴫原佐智子さん(川崎屋)「父ちゃん亡くなってから2か月経って、気持ちも切り替えないといけないと思って。“やろっか!”って気持ちになるね。これからも頑張れそうだ!」
真新しい暖簾に誘われるように、店には途切れることなくお客さんがやってきます。
針道に嫁いで50年、愛する康浩さんと守ってきた川崎屋の看板を未来に繋ぐ。その決意を胸に、佐智子さんはこれからも店に立ちます。
--鴫原佐智子さん(川崎屋)「友達とか周りの地元の人に支えられて今日があるとつくづく思う。この店を誰か継いでくれる人がいたらなあ、と言うのが私の今の願望。そういう人が現れるまではここで頑張らないといけないと思う、それが最後の私の仕事かなって。」
『ステップ』
福島県内にて月~金曜日 夕方6時15分~放送中
(2025年6月26日放送回より)