青森市の八甲田でクマに襲われた女性が亡くなった事故から1年となり、県警は25日、酸ヶ湯温泉などでチラシを配り、クマの事故への注意を呼び掛けました。

県警は青森市の酸ヶ湯温泉旅館の駐車場や近くの登山口で、山に入る人たちにチラシを配りました。そして、クマ被害の防止や山岳遭難に注意するよう呼び掛けました。

チラシを受け取った人は
「ここ何年かクマは、市街地に出るのがすごく多い。そういう意味でもより気をつけなければいけないなと」

八甲田では1年前の2024年6月25日、タケノコ採りに入った女性が体長約1.5mのクマに襲われ、亡くなりました。県内では2025年も連日、クマの目撃情報が寄せられていて、出没件数は371件に上ります。

弘前市では田んぼを駆けるクマが目撃されましたが、その体長は1m程度でした。

専門家は、こうしたクマの出没が増えることは警戒しなければならないと言います。

日本ツキノワグマ研究所 米田一彦さん
「体長1mのクマ。市街地に出る一番の問題は、母クマが駆除され、子グマが残る。野生化訓練を受けていない訳です。赤ん坊だから。人間を恐れない。子グマの時から人間社会の近くにいるから」

この時期としては1年間で1133件出没した2023年を上回るなど、2011年の統計開始以降、過去最多のペースとなっていて、県は「ツキノワグマ出没警報」を発表しています。

八甲田でクマに襲われて女性が亡くなった事故は当時、観光業界にも影響が出ました。八甲田の宿泊施設では、対策に力を入れ、より安全に観光できるよう取り組みを進めています。

宿泊施設の「八甲田山荘」を運営し、観光ガイドなども手がける相馬浩義さんは、1年前の事故を受けて入山が規制されていた間、会社としてクマへの警戒を強めて、客が安心して観光できるよう取り組みを進めました。

宿泊施設など運営する 相馬浩義さん
「山を点検するための登山をしたりとか、『クマの生態』をガイドを生業としている人たちで、もっとちゃんと知ろうということをやっていた」

1年前の事故と、事故に伴う約3か月の入山規制は地域の観光業界に大きな影響を及ぼしました。

八甲田ロープウェーの菊池智明さんは、入山が規制された直後の2024年7月は利用者が例年の半分ほどだったと話します。

登山客が多かった八甲田山荘では、ほぼ客足が途絶えた状態だったということです。

宿泊施設など運営する 相馬浩義さん
「何もなかったら(八甲田の観光は)楽しい。何もないようにしていくのは、山に入る人たちの知識だったり技術だったりする」

入山規制が解除されたあとから徐々に客足は戻り始め、今ではこれまで通りの利用者数に回復したということです。

ガイドでもある相馬さんは、自然豊かな場所を訪れる客自身も危険性への知識を深め観光を楽しんでほしいと呼びかけています。