横断幕は試合後、高知ユナイテッドSCの山本志穂美社長を通じて、小林心本人に渡される予定だった。しかし、そうなれば、大勢の高知サポータの熱い思いが込められた横断幕は、日の目を見なくなってしまう。

「ただ、移籍先の仙台でこの横断幕を掲げるのも、いかがなものか…」。既に移籍先・仙台の練習に参加していた小林心は、悩んでいた。そんな中、練習後に仙台サポーターと交流してこのことを打ち明けたところ、「ぜひ、その横断幕を仙台で掲げよう」という話になったという。

こうして、高知の山本社長を通じ、高知から仙台サポーターへの“横断幕リレー”が実現したのだった。

その横断幕が初めて掲げられたのが、6月22日のJ2・第20節、ベガルタ仙台vsヴァンフォーレ甲府の一戦だった。場所は、ベガルタのホーム・ユアテックスタジアム仙台の、スタンド“最前列”だった。

小林心選手のInstagramより

ベガルタのサポーターでびっしりと埋まり、チームカラーのゴールド一色に染まった、杜の都・仙台のスタンド。その最前列でポツンと掲げられた、緑色とえんじ色の横断幕。決して大きくはなく、その場に“合っている”とも言えないカラーリングだったが、そこには、遠い南国・土佐のサポーターの、数々の熱い思いが詰まっていた。

19節・モンテディオ山形戦(アウェー)で仙台移籍後のデビューを飾った小林心は、この試合、後半27分に途中出場して"仙台ホームデビュー"すると、横断幕の前で得点につながるパスを演出するなど、チームの逆転勝利に貢献した。

仙台のピッチでも躍動した24歳は、試合後、自身のInstagramを更新し、こう綴った。