コメ価格の高騰は、食用だけでなく加工用にも影響を及ぼしています。鹿児島の特産品のひとつ、「黒酢」もコメを主な原料としており、生産業者も頭を悩ませています。

農林水産省によりますと、今月1日までに全国のスーパーで販売されたコメ5キロあたりの平均価格は、前の週より37円安い税込み4223円でした。2週連続で下がったのは去年11月以来です。

鹿児島の中央値は5キロ税込み3758円と、前の週より108円安くなりました。

霧島市福山町で「桷志田」のブランドで黒酢を製造している福山黒酢です。毎年春と秋にコメを原料とした黒酢の仕込みを行っています。

福山黒酢では、黒酢の仕込みに「加工米」ではなく「食用米」を使用しているため、影響はより大きいと話します。

(福山黒酢・津曲晋作社長)「元々高い値段の食用米。さらに高い仕入れをせざるを得ない。(今年)春の仕込みの玄米は、去年の約2倍の価格に上がった」

契約農家の不作も重なり、今年の仕込みは全国からコメを探してなんとか確保できたということです。

(福山黒酢・津曲晋作社長)「契約農家が(コメを)半分しか出せないということだったので、全国各地から新たに契約して仕入れた。遠くは秋田県からも仕入れている」

黒酢ができあがるのは3年後で、玄米価格の高騰分は値上げせざるをえないといいます。

(福山黒酢・津曲晋作社長)「社内から、仕込まないリスクより仕込んだ方がいいという意見をもらったので(仕込む)判断ができた。ぶれずにやっていく」

政府の備蓄米の放出には期待する面もある一方、心境は複雑です。

(福山黒酢・津曲晋作社長)「備蓄米放出によって適正価格に戻りつつあるが、農家の苦労を考えると(値下がりへの期待は)簡単に発言できるものではない」

農家の苦労を知っているからこそ、生産者と消費者の狭間で揺れています。