スーパーでも見かけるようになった「養殖サーモン」。“水産業に全く関係のない”企業が続々と養殖を始めるワケとは。

世界的需要増で国内養殖拡大

「薬膳サーモンの握りになります」

艶のあるオレンジ色に、ほどよい脂の乗り。

東京・銀座で4月に開店した『鮨 千津井』の人気の逸品は、北海道で陸上養殖されている【薬膳サーモン】。乾燥させたみかんの皮や、松の実など数種類の薬膳食材を餌に混ぜ育てられています。

THE TIME,マーケティング部・山根千佳部員:
「サーモンに脂がしっかりのっていて大トロみたいです。とってもおいしいです」

世界的なサーモン需要の高まりなどを受け、国内の養殖地は140か所以上と年々拡大。(2025年5月末時点〔国研〕水産研究 教育機構 今井智 集計作図より)

これまで水産業に関わりのなかった企業も続々と参入しています。

ガス会社“初”「冷たい海水」活用

敷地内に直径12.5メートル・高さ2メートルの巨大な円柱状の水槽が5つ鎮座するのは、愛知県にある『東邦ガス』の知多緑浜工場(知多市)。

この水槽で約3万匹のサーモンを養殖し、5月には事業化してから“初”の水揚げを行いました。

国内のガス会社で初となるサーモン養殖。参入したワケは…?

事業開発部 次⻑・木村徳博さん:
「都市ガスを製造する中で“大量の冷たい海水”が発生する。サーモンは冷水性の魚なので、そのままサーモンの養殖に活用することができると」

家庭に提供している都市ガスは、「マイナス162℃」の液体天然ガス(LNG)を“海水”で温め気化することで製造しますが、その過程でできるのが「20℃以下まで冷えた大量の海水」。これまでは海に捨てられていましたが、養殖に利用することにしたのです。

冷やされた海水を使っていることから【知多クールサーモン】と名付けられ、地元のスーパーなどで販売。
『アピタ港店』(名古屋市)では、一般的な養殖サーモンが100g750円前後なのに対し、650円前後と多少割安になっています。(※販売日・店舗によって値段が異なる可能性があります)

試食したお客さんからも「脂がのっているけど臭みはなくて、おいしい」と反応は上々です。