ネタニヤフ首相の思惑 「地位維持のための戦闘再開」

ガザでは今年1月から停戦合意が続いていましたが、なぜイスラエルのネタニヤフ首相は3月18日に戦闘を再開したのでしょうか。鈴木特任准教授はイスラエル側、特にネタニヤフ政権の政治的な事情が大きな理由だと分析します。

戦闘再開前のネタニヤフ政権からは、ガザでの停戦維持に反対する政党が連立から離反した状態でした。そのままではネタニヤフ氏にとって政権維持の命綱となる年度予算の成立が危ぶまれました。

しかし戦闘再開によって連立復帰が実現し、ネタニヤフ氏は予算を成立させることができました。鈴木特任准教授は「ガザでの戦闘再開が連立復帰の条件になっていたと当然考えるべき」と指摘し、「ガザが連立のパートナーを引き留めるための道具になり、過去に例のない人道危機がひたすら悪化を続けている」と批判します。

さらに、ネタニヤフ氏が自らの汚職疑惑の裁判を抱えているという事情もあります。鈴木特任准教授によれば、ネタニヤフ氏は首相のポストを失った場合には収監される恐れもあり、「ネタニヤフ氏には首相の立場に残りたいという利害がある」と指摘します。

こうしたネタニヤフ氏の姿勢に対し、イスラエル国民の中からも「戦闘を継続することで政権の危機を乗り切ろうとしている」という批判が出ていると鈴木特任准教授は指摘します。