近藤が再現できた“力を使わない走り”

近藤亮太は2月の大阪マラソンで日本人トップの2位。2時間05分39秒と初マラソン日本最高記録を28秒更新した。今、勢いのある選手といえる。しかし4月19日の5000mは14分03秒65、5月3日のロード5kmでは14分24秒と、良くない走りが続いていた。

「今年度に入ってのトラックレースで、満足のいく動き、走りができていなかったので、NITTAIDAI Challenge Gamesに向けては集中して仕上げていくことが、目的の1つとしてありました。自己ベスト(13分42秒08)に近いタイムを目標にして、実際に13分46秒59で走れたことはすごく収穫がありました」

近藤選手(赤いユニフォーム)

単純にタイムだけでなく、走りの内容が良かったという。トラックとしては大人数で走るレースなので、集団の中でのペース変化に対応するところや、位置取りなどはロードレースにも通じる部分がある。「その中で自分の力を使い切らずに集団の前との差を詰めたり、慌てずに対処できたのは今後のロードレースにつながります」。力を使わない走りは長距離関係者が“ランニングエコノミー”と言って重視している部分である。近藤はそれができるレースが、以前は年に1回くらいしかなかったが、大阪マラソンまでの練習でそのコツをつかんでいた。

「前の選手のお尻を見ることで上半身が前傾できて、軸がぶれなくなり、楽に走ることができました。それまではどう力を使うかを考えていましたが、力を抜けばいいとわかったんです」。その走りがNITTAIDAI Challenge Gamesでは「久しぶりにできた」という。

「この1カ月間で体重も落として、スピードを上げた設定で練習ができるようになっていました。レース前に親しい選手が13分38秒を目標にしていると聞いて、彼のお尻を見て集中して、リズムを取って走ることができたんです。1000mあたり2分45秒ペースも余裕を持って走ることができたので、この感覚を大事にしていきます」

レース後には近藤も「次の函館ハーフマラソンや世界陸上につながるレースでした」と、吉田と同じ感想を話した。

2人が走った前日の10000mには、もう1人のマラソン世界陸上代表の小山直城(29、Honda)も出場し、28分38秒18(8位、日本人2位)で走った。記録自体は良くないが、当初から練習代わりと位置づけ、5000mの2人ほどタイムを求めていなかった。その小山も2人と同じ函館ハーフマラソンに出場する。代表3人は徐々に、ロード仕様の走りにシフトし、暑さ対策やコースの研究など、地元の利点も活用しての対策も行っていく。近藤はNITTAIDAI Challenge Gamesの翌日に、陸連科学委員会とミーティングも行った。

函館後には3人とも高地トレーニング(小山と近藤は海外、吉田は国内)も組み込みながら、9月15日の東京2025世界陸上男子マラソンに向かっていく。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)