「違法」と指摘されるも…斎藤知事「県の対応は適切だった」の考え変えず

そもそも混乱の発端は、告発した元県民局長が「公益通報者」として守られなかったことにある。

「公益通報者保護法」は、自治体などに通報者を保護する体制の整備を義務づけている。

2025年3月、元県民局長の告発については第三者委員会が「外部への公益通報」と認定。県の告発者捜しを「違法」と結論づけたが、斎藤知事は、これと異なる見解を示し続けている。

兵庫県 斎藤元彦 知事
「(保護体制の対象は)内部通報に限定されるという考え方もある。違法性の認定については専門家でも意見が分かれている。我々としては、これまで会見や議会でも申し上げた通り、今回の対応については適切だった」

斎藤知事の発言の根拠は何なのか。神戸学院大学の上脇博之教授は県に対し、それを示す文書の開示請求を行った。すると…

神戸学院大学 法学部 上脇博之 教授
「専門家の意見を収集しているかどうか、情報公開請求の一つとしてやったが、これが『不存在』だった。つまり第三者委員会の結論をひっくり返すような、それに反対するような意見を当時持ってないにもかかわらず、『意見が分かれている』と」

公益通報者保護法に関する専門家の意見が書かれた文書は「作成・保有していないため不存在」だった。

さらに、上脇教授が追加で開示請求すると、斎藤知事が参考にしているのは、公益通報の専門家ではない弁護士の意見だということが分かった。

神戸学院大学 法学部 上脇博之 教授
「(公益通報に関する)著書とか論文を書いた専門家の意見ではない。悪い方向での解釈を認めてしまうと、結果的に守られない人たちが今後も生まれてしまう。第2、第3の犠牲者が出る可能性が出てくる」

4月、制度を所管する消費者庁は、斎藤知事の発言は「公式見解と異なる」と指摘するメールを県に送っている。

しかし、斎藤知事はその後も見解を変えていない。

兵庫県 斎藤元彦 知事 
「消費者庁の法解釈に関する一般論としての見解ですね。ここはしっかり受け止めていくことが重要」

Q.重く受け止めると言いながら見解は決して変えない、自らに誤りはなかったという主張をずっと貫かれているんですけども。

兵庫県 斎藤元彦 知事
「消費者庁や様々なご指摘というものは、真摯に受け止めるということは大事だと思いますけど」

Q.真摯に受けとめるのであれば、県の対応は適切でなかったとなるのが普通のロジックだと思うんですけど。

兵庫県 斎藤元彦 知事
「いや、これまでいろんな場で申しあげてきた通り、県の対応については適切だったという考えに変わりはありません」

5月22日、国会では…

立憲民主党 川内博史 衆院議員
「法令に違反した発言がずっと続いているわけですから、兵庫県に対して、さらなる対応を求めたいと思うが、いかがでしょうか」

消費者庁 藤本武士 政策立案総括審議官
「公益通報者保護法の内容や解釈について、地方自治体含めて全ての事業者に正しく理解されることは重要である。消費者庁において、どのような対応ができるのか、今検討している」

公益通報者保護法に詳しい上智大学の奥山教授は、斎藤知事の誤った法解釈に危機感を持っている。

上智大学 奥山俊宏 教授
「行政機関の長として言うのだとすれば、いろんな矛盾が生じることになる。自分たちの行為を正当化したいから、そう述べているのではないか。私利私欲のために県の行政を歪めていると言って過言ではない言動だと思います」