小泉大臣「備蓄米を5キロ2000円で」
就任翌日の23日、小泉農水大臣は、随意契約によって「6月上旬にも備蓄米を5キロ2000円台で店頭に並べたい」と意向を明らかにしました。その上で。楽天の三木谷社長にも面会、協力を要請し、随意契約の対象に通信販売事業者も含める方針を示しました。さらに同じ日の夜には、「2000円台を2000円に」と変更するスピードぶりです。随意契約で備蓄米が大手の流通業者や通販業者に大量に放出されれば、かなりのインパクトがあるでしょう。
というのも、伝統的な流通ルートの事業者には、高値で仕入れた今の在庫を、安く売ろうというインセンティブは働かないからです。市場価格全体を下げるためには、「今のままの値段では、在庫が売れない」と各事業者が判断するような状況を作らなければなりません。
現状を全体として見れば、生産から消費に至る、あらゆる段階に、意図はともかく、コメの値上がりを前提にした、在庫や滞留が存在していると見るのが自然です。これ以上持っていても仕方がないと参加者に思わせる状況を、人為的に作らない限り、コメは出て来ず、価格も下落に転じないと考えるのが普通です。備蓄米の放出方法を根本的に変えることで、そうした状況を作ることは、挑戦する価値のある政策だと思います。
コメ「全量管理」への過信を改めよ
一方で、流通段階の「目詰まり」はあるにしても、そもそも「コメが足りていない」という事実にも、向き合う必要がありそうです。要は農水省が把握している推計生産量と、実際の流通量に乖離があるのではないかと疑念です。
政府のコメの生産量は、全量を調査しているのではなく、サンプル調査です。調査員の減少など長年の予算削減もあって、需給に関する調査の正確性が著しく低下している可能性があります。コメが足りないのなら、生産者の意欲を通して、増産に転じるのは当然です。
コメ政策は、長らくコメの価格維持が目標で、そのために生産を調整するという枠組みで行われてきました。つまり、政府がコメの生産・需要量を把握し、管理できるという前提なのです。コメの「全量管理」こそが、農水省のいわば「存在意義」であり、自負でもありました。しかし、流通の多様化もあって、もはや全量管理などできないことが白日の下にさらされたのが、今回のコメ騒動でした。
コメの全量管理などという「過信」を改め、生産者の創意と市場の機能を尊重したコメ政策に転換することが、価格引き下げの後に来る、「本丸」の課題だと言えるでしょう。
播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)