国立競技場との相性の良い栁田
栁田は国立競技場で何度も快走してきた。高校2年時の20年には、GGPにドリームレーン枠(コロナ禍で大会開催が困難な社会状況も考慮し有望高校生選手に出場機会を設定)で出場。予選で10秒27(追い風0.7m)と当時の自己新をマークし、決勝は10秒36(向かい風0.2m)で5位。18年の全日本中学選手権、前年の国体少年B(中学生と高校1年生のクラス)と走幅跳で全国優勝していたが、GGPが100mに転向するきっかけになった。
22年はGGP4位と関東インカレ優勝、24年のGGP優勝という戦績を残し、今回の10秒06が国立競技場での自己最高記録(自己サード記録で国内自己最高記録)である。栁田はGGPや国立競技場で快走してきたことを、次のようにコメントした。「来年も同じ時期にGGPがあったら、また勝てるんじゃないかと思ってしまいそうですが、気を引き締め直してやりたいですね。国立競技場でも、何度も走らせてもらえていて、相性が良いのかもしれません。世界陸上が行われる会場でハイレベルなレースをしっかり勝ったのは、絶対にマイナスなことはないと思っています」
ただ、コールマンたち外国勢が今回、完全な状態で走っていないことも認識している。「どの選手も夏に向けて絶対に上がってきます。世界陸上のセミファイナルになったら、9秒台が当たり前のように出て、目標の決勝に進出するには9秒9台前半を出さないといけないこともあり得ます。まずは代表権をちゃんと取るところからですが、世界陸上で負けないように僕も練習をやっていきたい」
アジア選手権やダイヤモンドリーグの4×100mリレーなど、栁田は大きな舞台で力を発揮してきた。その舞台が国立競技場となれば、これまで以上の走りをするのではないか。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)