音楽との出会いと、影響を受けた作曲家たち

木村氏が作曲家を志すきっかけとなったのは、大学時代に授業で見た映画『タイタンズを忘れない』(2000年・米)だった。「英語の授業で見た映画だったんですけど、なぜか物語よりも音楽に聴き入って感動していましたね」と笑う。

その後、ドラマ音楽の世界で大きな影響を受けたのが、同じ音楽事務所に所属する作曲家・髙見優氏や福島祐子氏の劇伴だった。「『歌姫』(TBS系)とか映画『図書館戦争』(2013年)とか。何も知らずに聴いていても、“この曲、耳に残るな”って思ったら、髙見優さんや福島祐子さんの曲だったことが多くて。メロディーを大事にしている印象がすごくあって、同じ音楽事務所に入りたいなと思っていました」

こうした経験を経て、木村氏の中には「耳に残るメロディー」を大切にしたいという思いが自然と根づいていった。「自分がそういう音楽を“いいな”と思って聴いてきたので、今も心に残るメロディーを作ろうと頑張っています」

さらに、自ら手がけた音楽が誰かの人生に影響を与える瞬間に立ち会ったことも、制作への意識を深めるきっかけとなった。

「自分が担当した『ウロボロス~この愛こそ、正義。』(TBS系)がきっかけで、この業界に入ったと教えてくれた監督がいて。その方からオファーをいただいたことがありました。仕事として音楽を作っているけれど、誰かの思い出に関わることができたと実感して、それ以来、常に心の片隅にその気持ちを持ちながら制作に臨んでいます」

日曜劇場『キャスター』より

“目立ちすぎない音楽”であっても、その一音には確かな意志が宿る。木村氏の劇伴には、作品を支える役割を超え、人の記憶に静かに寄り添い続ける“余韻”が刻まれている。