増え続ける劇伴曲数と“日曜劇場の密度”

日曜劇場『キャスター』より

『キャスター』の制作でも、木村氏は30曲弱の劇伴を書き下ろしたという。近年のドラマでは、それが「珍しくない数」になっている。

「以前に比べてドラマの構成が複雑になっているのも要因の1つだと思います。昔は20曲あれば十分っていわれていましたが、最近はもう30曲が普通になってきましたね。今は8割以上の場面に音楽が敷かれている感覚があります」

日曜劇場『キャスター』より

また、編集段階での追加オーダーも珍しくないという。

「撮影の空気とか、役者さんの演技のトーンで、“ここは別の曲の方がいいかも”ってなったりするので、初めからちょっと多めに用意しておくんです。最初に“25曲”と依頼された時点で、“多分あと2~3曲は増えるな”って。そういう進め方が自然になってきました」

曲数の増加は、音楽が果たす役割の広がりでもある。視聴者の気づかないところで、場面の空気をコントロールし、語られない感情を補っているのが、劇伴の力なのだ。