「信頼できる大人がいない」出院後の壁
出院したA少年は、その後、更生の道を歩んでいるのか。3か月が過ぎた頃、思わぬ知らせが。A少年が逮捕されたというのだ。早速、自宅に向かった。

A少年の祖母
「(相手に)怪我をさせてしまったことと、お金をせびったことで、仕事も探したけどうまくいかない」
A少年は出院後、祖父母の元で暮らしながら、営業の仕事をしていたが、プレッシャーに耐えかね、ひと月ほどで辞めてしまった。その後、後輩との間で揉め事を起こし、傷害と恐喝未遂の疑いで逮捕された。
非行少年が再び検挙される数は、2004年以降、減少していたが、2023年から増加に転じ、20%以上も増えている。
ーー暴力的な面ってある?

A少年の祖母
「普段はないです。私の知らないところで何かあった。心に傷になることがあったのは感じた」
それから1週間あまり。A少年は示談金を払って釈放され、自宅に帰ってきた。雰囲気は少年院にいた頃と明らかに変わっていた。

A少年(19)
「最初は頑張る気があった。仲良くなるのがそっち(不良)系の人たちで、元々の自分に戻っていって。少年院だと寄り添ってくれる担任、規則がある。それに従って動いてればいい。社会は自分でやることを見つける。時間調節しながら、やらないといけないので難しい」
ーー周りに相談する人はいる?

A少年(19)
「いないです。人生の中で相談できたのが江藤先生なんで」
部屋には高原寮にいた頃に書いた努力目標が貼られていた。

A少年(19)
「毎日ここを出て行く時は見る。こんなこと考えていたなと頑張ろうとはしてるけど、積極的に相談なんてしていない」
この日、A少年は、自ら車を運転してお世話になった江藤教官のもとを訪ねた。
これまで出院後に法務教官が相談に応じる制度はなかったが、2015年の少年院法改正で、社会復帰支援が盛り込まれ、出院後もこうして面接を受けることが可能になった。

A少年(19)
「(少年院)出てから1か月ぐらい調子よかったんですけど、そのあと落ちこぼれすぎて」
江藤法務教官
「思った以上にギャップはあった?」
A少年(19)
「ありすぎました。信頼できる大人がいないんです。話せる人を見つけようとしたけど、どうしても駄目なんです」
江藤法務教官
「表面上で取り繕っている間は、多分向こうも心を開いてくれないし、自分も疑心暗鬼のまま。少しずつ時間を重ねていけば、この人ってこんな人なんだと見えてくる。ちゃんと見てる人は見てるから、その人たちを裏切らないようにしっかり頑張って」

面接を終えたA少年は…
ーー気分変わった?
A少年(19)
「だいぶ変わりました。江藤先生の影響力やばいです。来てよかったです、本当に」
A少年の中に、生きづらさが完全に消えたわけではない。それでも今は、タクシードライバーになることを目標に就職活動に励んでいる。

A少年(19)
「真面目に職探して、安定するまで頑張って、現実から逃げないで。何かあったら溜めないで、江藤先生に話聞いてもらって、ちょっとずつ解決できたらいい」