停戦実現への課題と日本の役割「ウクライナ情勢はヨーロッパだけの問題ではない」
トランプ大統領の仲介努力にもかかわらず、停戦実現への道のりは依然として険しい。5月8日にロシアが一方的に宣言した72時間の一時停戦は、開始からわずか数時間で破られた。ウクライナ北東部でロシアの攻撃があり、1人が死亡した。
恒久的な停戦への道筋をめぐっては、アメリカとヨーロッパ諸国の間で停戦に対するアプローチが異なっている。外務省担当記者によると、「アメリカは制裁を交渉カードにしてうまくロシアを交渉の席につかせたい。対してヨーロッパはとにかく経済制裁をかけ続け、ロシアを弱体化させ、力で押さえつけて停戦に持っていきたい」という考えの違いがあるという。
こうした中、日本の役割として注目されるのが、アメリカとヨーロッパの橋渡し役だ。外務省関係者は「日本はG7の中で意見に隔たりのあるアメリカとヨーロッパがばらばらにならないよう立ち回ることが大切だ」と話している。また、日本がウクライナ支援や対ロシア制裁を続けることで、「ウクライナ情勢はヨーロッパだけの問題ではない」というメッセージを他のアジアの国にも届けることも重要だという。

日本はこれまで105億ユーロ(約2兆円)の支援をウクライナに行っており、ヨーロッパ諸国と比較しても遜色ない額だ。ただし、日本の支援は軍事面ではなく、財政支援や人道支援、復旧復興支援が中心となっている。ウクライナの人々を継続的に取材してきた記者によると、現地では「日本にはできるだけ多くの国と団結して、ロシアに対する制裁措置で平和を促してほしい」という声が聞かれるという。
停戦実現に向けては、6月15日からカナダで開催されるG7首脳会議が1つの転機となる可能性がある。しかし、外務省担当記者は「トランプ大統領の言うことが今から180度変わっている可能性もあるので、正直わからない」と指摘し、予断を許さない状況が続いている。
トランプ大統領の仲介努力が実を結ぶかどうかは不透明だが、ウクライナの人々の平和への願いは変わらない。国際社会の協調と粘り強い外交努力が、今まさに求められている。
TBSテレビ政治部 外務省キャップ・大崎雅基、政治部 落合梨眞














