「ブリ」の成長段階と方言の豊かさ

ブリの成長段階(四段階)と代表的な呼び名

「ブリ」の魅力は、その味だけではない。日本人にとって身近な魚であり、成長段階によって呼び名が変わる「出世魚」の代表でもあるために豊かな方言名が生まれ、加藤さんによると、全国で100種類ほどの方言が記録されているという。

ブリの呼称に関する地域ごとの違い
ブリは「出世魚」として、成長段階に応じて異なる名前で呼ばれる。一番大きなものを指すブリは全国ほぼ同じだが、それより小さいものの呼称は、地域によって大きく異なり、日本の方言の豊かさを示している。

東日本
● ワカシ:15~20センチほど
● イナダ:30~40センチほど
● ワラサ:50~70センチほど
● ブリ: 80センチ以上
東日本の代表的な呼称はこのように変わり、関東地方を中心に広く使われている。

北陸地方(石川・富山)
● コゾクラ: 30~40センチほど
● フクラギ:30~40センチほど
● ガンド: 50~70センチほど
● ブリ: 80センチ以上

石川のコゾクラにあたるものを富山ではツバイソ、コズクラと言いますが、それより大きなものは同じ呼び名になる。加藤さんによれば、「フクラギ」の語源は、足のふくらはぎの形や長さに似ていることから、「ガンド」の語源は、江戸時代の盗賊が夜に使った釣鐘型の手提げ提灯「龕灯(ガンドウ)」に形、大きさが似ていたことによるものだろうと言う。

関西地方
● ツバス:15~20センチほど       
● ハマチ:30~40センチほど
● メジロ:50~70センチほど
● ブリ:80センチ以上

関西から中国地方では、最も小さいサイズを「ツバス」、次の大きさのものを「ハマチ」と呼ぶ点で共通している。「ハマチ」という呼称は、最近では関東地方を中心に東日本でも中型のブリを指して使うことが増えているようだが、本来は関西地方中心の呼称だったものが広げたものであることがわかる。