そして“頭脳流出”へ…“不信感”の渦が破壊する“牽引役”としてのアメリカ
大学同様、トランプ政権による研究機関への圧力は強まっています。

たとえば、NASA(アメリカ航空宇宙局)に対しては、研究予算をおよそ半減すると提示。(ワシントン・ポスト11日)

また、気象情報の提供や海洋調査などを行うNOAA(アメリカ海洋大気庁)に対しては、2025年、職員の約20%の削減が計画されています。(ロイター3月9日)
NOAAで解雇通告を受けたデビッド・ディ・ディハーンさん
「この仕事(NOAA)に2024年10月に就きましたが、残念ながら5か月後に解雇されたんです」
マグロなどの研究に携わってきたディハーンさんは、突然メールが届き、90分以内に職場を去れと通告されました。今後、ヨーロッパで働くことを考えているといいます。

ディハーンさん
「私の仕事は専門的なもので、科学や海洋研究に情熱があるからやっています。海外に移住します。研究のチャンスがあるなら、どこにでも行くつもりです」

ヨーロッパ各国は、こうした研究者の受け入れに積極的と報じられており、アメリカからの“頭脳流出”も現実味を帯びています。
にもかかわらず、圧力が弱まる気配がないのはなぜか。渡辺教授は、トランプ支持層の期待が背景にあるといいます。
慶応大学・渡辺靖 教授(現代アメリカ論)
「これまでエリートとか知識人の言うことを聞いてきた結果、自分たちの生活がこんなにも惨めになったという不信感がうごめいていて、ましてや大学を出ていない人たちからすると、より強力な壊し屋を救世主として、トランプ支持がより鮮明になる」
実際、2022年のアメリカの国勢調査によれば、25歳以上の6割強が大卒ではなく、2024年の大統領選の出口調査では、そうした人の半数以上がトランプ氏に投票しています。

渡辺教授はこうしたトランプ政権の姿勢は、第二次大戦後、アメリカの繁栄を支えた力の源泉を失わせるだけでなく、国際社会全体に大きな影響を及ぼすと懸念します。

渡辺教授
「とにかく力任せで自分たちに従わない者は弾圧していく。言論統制、思想統制につながっていきかねない。ますますソフトパワーも低減していく。
第二次世界大戦というのは、その反省をもとに、自由で開かれた社会、法に基づいた秩序が必要だということでアメリカが牽引してきた。国際秩序の根底が大きく揺らぐ、非常に危険な状況にある」
アメリカを支えてきた“知”に対する圧力。それは、この国をどこへ導くのでしょうか。