備蓄米放出で浮き上がる“日本のガタ”

小川彩佳キャスター:
江藤農水大臣は、備蓄米が出回らないことについて、物流の問題を挙げていましたが、「具体的な出荷のタイミングの指示すらない」という保管業者の方の証言を得ました。

東京大学准教授 斎藤幸平さん:
緊急事態用の備蓄米なので、即座に放出して欲しいですよね。

しかし、今回浮かび上がってきているのは、単にコメの量が足りないという問題だけではありません。物流の人手不足もかなり深刻になっている。そういった意味では、日本全体のいろんなガタが現れ始めてきていて、これは今後さらに慢性化していく、構造的な問題だということです。

さらに今後は気候変動とかも加わり、暑さに強くないコシヒカリなどは、生産量がさらに下がっていくこともあります。ベトナムなどから輸入して一時しのぎは出来ても、一次産業がさらに衰退してしまえば本末転倒なので、何とか増産ができる体制を整えてほしいとイチ消費者としても強く願っています。

藤森キャスター:
今回は消費者とセットで生産者も守っていかなければいけないと、はっきりわかりましたよね。

斎藤幸平さん:
ただ、そういう中で農協に対するバッシングや、「投機目的で誰かが溜めているんじゃないか」「運送業がしっかりやってない」など様々なバッシングをして、責任をなすりつけ合う感じになりつつあります。

しかし根本的な問題は、日本人の主食であるコメを減反して生産調整を続け、絶対量が不足しているのであれば価格を上げて需給調整をする、という今のようなやり方では不十分であるという点です。絶対量を増やすという形で、価格を調整していくやり方にぜひ向かってほしいと思います。

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<プロフィール>
斎藤幸平さん
東京大学准教授 専門は経済・社会思想
ドイツ在住
著書『人新世の「資本論」』