喪失から希望へ 一人じゃないよと伝えたい

30歳手前…、気持ちに区切りをつけた時に、今の夫である幼稚園時代の幼なじみと再会しました。

“早発閉経”について発信 千種ゆり子さん
「結婚願望はありましたが、自信を失っていたんですよね。子ども、子どもって言う人とはちょっと傷つけられるかなって。だから、昔から私のことを知っている存在に対してものすごく安心感がありました」

「結婚を前提に交際を申し込まれた際、体(病気)のことを打ち明けました。そうしたら、子どもが欲しくて結婚するんじゃなくて、私と結婚したいからと言ってくれました」

自分を受け入れてくれる人ができたことで大きな安心感が生まれたという千種さん。

そして2022年、34歳のときSNSで早発閉経を公表しました。同じように悩んでいる誰かのためにという思いからでした。

“早発閉経”について発信 千種ゆり子さん
「自分が経験した、苦しい思いをする人を減らしたいと思いました。私が発信したことで、誰かが病院に行って、生理が来なかったけど、ちゃんと来るようになって、妊娠できましたみたいなことがあったら、嬉しいなと思ったんです」

「人の力になりたいというか。そういう人も周りに言えなくて、悩んで、孤独感を感じているかなと思うので。一人じゃないよって言えたらいいなって」

千種さんは今、若い時から自分の体に興味を持つことや、産婦人科受診の大切さを広く伝えていくため、自身の経験をもとにした映画の制作を進めています。

“早発閉経”について発信 千種ゆり子さん
「どうしても自分に向き合うことから逃げちゃうっていうのが皆さんあるかなと思っていて、自分の体に何か異変があっても、それに向き合うことが嫌で、病院に行かないとか…」
「私自身、自分の不安なことに向き合って、結構ジタバタした結果、それなりに幸せな状態を手に入れているのかなって言うのがあるので」

「苦しんだ先には何か自分についての新たな発見や、思っていた最高の形じゃないかもしれないけど、それなりに幸せな未来がやってくるかなって。なので、もし何か不安に思っていて、将来子どもを持てるのかなと思っている人がいたら、ぜひ一歩踏み出して病院に行ってみるっていうことを知ってほしいです」

▼人はみんな、子どもを産めるもの。
▼生理は毎月来るもの。

でも、それができない誰かが、すぐそばにいるかもしれない。千種さんは“その人がどう生きているか”に目を向けてほしいと願っています。

“早発閉経”について発信 千種ゆり子さん
「目の前にいる人が、“みんなができることができない人かもしれない”。そういう目線でみんなが接することができたら、より生きやすくなる人もいるのかな。完璧にそれをやり切ることは不可能なんですけど、社会の当たり前のフィルターを持って見るのではなくて、その人そのものだけを見て対峙してあげてほしいなって思います」

多様な生き方が、当たり前に尊重される社会に。
その一歩は、目の前の“違う誰か”を、ただそのまま見つめることから始まるのかもしれません。

取材後記(舟本真理キャスター)

取材を通じて感じたのは、“世間の常識”が実はどれだけの人を見えない場所で苦しめているか、ということです。例えば、

「子どもは授かって当たり前」
「生理はあるのが普通」
「妊娠できるのが女の幸せ」

千種さんはその苦しみを経験してきたからこそ、「その人そのものを見る」という本質にたどり着いたのだと感じました。千種さんが話していた「完璧にやる必要はない。だけど、ほんの少しでも想像してみる」その心の動きが、きっと社会の優しさを育てていくのだと思いました。