大阪・関西万博には158の国と地域が参加していますが、その中に、戦時下・紛争中のウクライナ・イスラエル・パレスチナも名を連ねています。予算不足や準備期間の少ない中でも参加を決めた国や地域…どういった思いで大阪までやってきたのでしょうか?

【ウクライナ】「戦争で予算があまりなくて…」開幕5か月前に急きょ参加表明

 万博開幕前日の4月12日。共同館の片隅で、展示物を並べる1人の女性がいました。キーウ出身、ウクライナ館のインナ・イリナさんです。

 (ウクライナ館 インナ・イリナさん)「(Qこれはどんなアイテム?)ノートです。出版社はウクライナのハルキウに元々あったんですが(ロシアからの攻撃で)破壊されました」

 パビリオンで展示される本には、戦時下でもビジネスを続ける20の企業のエピソードが紹介されています。甚大な被害が出ているロシアによるウクライナ侵攻。侵攻の影響により開幕5か月前の去年11月に急きょ参加表明したウクライナは、急ピッチで展示の準備を進めていました。

 (インナ・イリナさん)「ウクライナは戦争の中で、万博に参加する予算はあまりなくて、なかなか参加を決められなかった。準備の時間がちょっと足りないけれど、みんなで頑張って参加しようと決めてこちらに来ました」

 2022年2月、前回のドバイ万博の開催期間中に戦争は始まりました。ロシアもウクライナも、独自に建設するタイプAパビリオンで参加していました。ロシア館は最新の科学技術などを展示。

 (ドバイ万博 ロシア館担当者※2022年)「万博は政治とは関係がないので展示にも影響はない」

 一方、ウクライナ館は展示内容を変更し、ゼレンスキー大統領のパネルを準備。国際社会へ支援を呼びかけました。さらに、世界各国の来場者が平和への祈りを込めたメッセージを壁一面に記し、その数は2万を越えていました。

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 そして開幕した大阪・関西万博。ロシアは「主催者との十分なコミュニケーションが取れていない」と撤退しました。一方のウクライナ館は、大幅に規模を縮小し、コモンズCという共同館での出展となりました。

 (ウクライナ テチャーナ・ベレジュナ経済副大臣)「私たちがこの万博で発信するメッセージは強い。とても短いですが、とても明確です。私たちウクライナの価値は“売り渡せない”ということです」

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 無事、開幕日に間に合ったウクライナ館。開館式には大勢の来場者が詰めかけました。テーマの「NOT FOR SALE」は「ウクライナの価値は売り渡せない」という意味。銃弾が撃ち込まれたサイレンや、兵士が戦場で使っている装備も展示されています。さらに、展示品のバーコードを端末でスキャンすると、展示品にまつわる戦地のエピソードが動画で見られます。

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 (インナ・イリナさん)「われわれが紹介しているビデオはあまり楽しくないビデオです。子どもたちには、苦しくてもつらくても伝えたいと思います。平和はとても大事だよと」

 展示を見た来場者は…

 「(日本で)ふだん文化的な営みを平和の中でできているのに対して、ウクライナの皆さんは戦争の恐怖におびえながらしないといけない。ニュースで見ていただけでは実感できなかったんですが、実際の映像とともに見ることで、リアリティを持ってイメージができた」

 また、万博参加には他の参加者と交流できる魅力もあるといいます。この日は、「崖っぷちの世界」というテーマのパネルディスカッションがイギリス館で行われ、価値観や経済などについて話し合われました。

 (ウクライナ 国立タラス・シェフチェンコ大学 ナタリア・クリフダ教授)
 「イギリスと日本の政府や人々からの支援に感謝します。このパネルはウクライナについてだけではありません、世界的な課題です」
 (ウクライナ テチャーナ・ベレジュナ経済副大臣)
 「100年前のSNSがなく情報が交換できない世界では、万博会場に来てエスカレーターや農業の発明などを見に来ていました。きょうのウクライナは価値観を伝えるために来ました」
 
 (インナ・イリナさん)「万博でこういうチャンスがあって、すごくいいと思います。話し合える機会があって、改めてウクライナについてお話できてとてもよかったです」