「アメリカに大きく打って出たいと思っていた矢先だった」 日本の和牛 アメリカの注文減で国内供給過多のおそれ

波乱のスタートとなる関税交渉。

主な焦点は、トランプ大統領が日本に課すと表明した24%の“相互関税”を引き下げられるかどうかです。

“相互関税”をめぐってトランプ氏は、まず、各国一律に10%の関税をかけました。

その後、日本の場合は14%が上乗せされ、一時24%に引き上げられましたが、中国を除く国について、上乗せ分の適用を90日間停止にしました。

この90日の間に、自動車や農産物を含む幅広い分野の関税などが話し合われることになります。

アメリカ産牛肉を使ったステーキが人気の都内のステーキ店では、円安などで仕入れ価格は高騰していて、関税交渉の行方に注目しています。

ステーキハウスミスターデンジャー 松永光弘 オーナー
「関税合戦によって日本がどう交渉するか」

生産現場も心配が尽きません。

茨城県の和牛「常陸牛」は、霜降りの甘い脂が特徴で、欧米や東南アジアで人気となっています。

茨城県常陸牛振興協会 谷口勇 事務局長
「アメリカが輸入する関税率を大幅に上げると、我々にとっては青天の霹靂」

常陸牛を世界に売り出していた、茨城県常陸牛振興協会の谷口事務局長は、このように話します。

茨城県常陸牛振興協会 谷口勇 事務局長
「令和7年(2025年)からアメリカに大きく打って出たいと思っていた矢先だった。ショックは大きい」

“相互関税”の90日間停止を受けて、アメリカの取引先からは“駆け込み需要”があり、15日は普段の4倍にあたる20頭分の注文があったといいます。

関税が上がった場合、アメリカでの販売価格が高騰し、消費者が離れることを懸念しています。

茨城県常陸牛振興協会 谷口勇 事務局長
「日本の価格からすれば1.6倍ぐらいかそれ以上になってしまうので、さすがに裕福なアメリカ国民でも食べづらくなるのかなという思いがある」

生産者は、アメリカの注文が減った分が日本に回り、国内で供給過多になる不安を口にします。

藤井商店 藤井勲 代表
「(国内の供給が)だぶついちゃうということなので、国内の価格が下がるという懸念がある」

アメリカとの交渉の中では、日本独自の規制なども「非関税障壁」として見直しを求められる可能性があります。

谷口さんが気がかりなのは、「牛マルキン」と呼ばれる交付金制度。

食用の牛の販売価格が、餌代など生産にかかる費用を下回った場合、差額の9割を国などが補填しています。

茨城県常陸牛振興協会 谷口勇 事務局長
「仮に取っ払ったりすると、それこそ農業崩壊につながりかねないという懸念はある。私たちとしては、妥当な制度じゃないかと思っている」