「重要なのはコスパ」 飲食店“大量倒産”の背景とは?

なぜ1年間で300万店もの店が潰れたのか?

私たちは、6年間にわたって飲食店を相手にリサイクル業を営んできた男性にインタビューすることができた。

飲食店専門のリサイクル業を経営する 安大為さん
「消費が落ち込んでいて価格が高い店に対するニーズは明らかに減少しています」

安さんによると、景気の先行きの不透明感が強まっていることもありビジネス会食の機会が以前より少なくなっていることや、市民の給与所得が減っているため、比較的価格の高い高級店が苦戦しているのだという。

回収された大量の冷蔵庫や食器などが倉庫に保管されていた

さらに、新型コロナの影響でリストラされた人たちが外食産業に流れ込み、2023年の上半期だけで200万店近くの飲食店がオープン。供給過剰になっていたことも飲食店の大量倒産につながった要因だという。

最後に、今後、飲食店が生き残るための条件についても聞いてみた。

飲食店専門のリサイクル業を経営する 安大為さん
「100元(日本円で約2000円)以内に客単価を抑えて利益を出せる店が生き残っています。一番重要なのはコスパです」

コスパが重視される中国。縮小していく消費にどのように対応していくのかが経済を立て直すためのカギとなりそうだ。

取材後記

全人代で消費の落ち込みに対する強い危機感を示した政府は、具体的な消費振興策として消費財の買い替え支援策を打ち出した。こうした政策は去年から行われていて、スマートフォンや自動車、家電などを買い替える際に補助金が出る。今後は支援する対象をさらに増やすという。

しかし、こうした中国政府の政策について「需要を先食いしているだけ」(中国経済の専門家)という指摘もある。消費を増やすためには賃上げや社会保障の整備などを通して安心してお金を使うことができる環境を整える必要がある。ただ、最低賃金の引き上げや社会保障の整備は多くの企業が絡む話でもあり、一筋縄ではいかないだろう。

それでも、中国政府は補助金の支給という一時的な解決策にとどまらず、抜本的な改革に乗り出すのか。政府のかじ取りに注目していきたい。

文  JNN北京支局 松尾一志
撮影 JNN北京支局 室谷陽太