トランプ・スタグフレーションとAIバブル崩壊?

――きょうのテーマは「トランプ・スタグフレーションとAIバブル崩壊?」

スタグフレーションとは元々あった言葉か。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
スタグフレーションは造語。「スタグネーション(景気停滞)」と「インフレーション」を組み合わせた言葉。景気停滞、もしくは景気後退とインフレが同時に進行する状況を指す。景気が悪いにもかかわらず物価が上がる最悪の状態であり、非常に苦しい状況である。ここ数年の日本は景気が良くないにも関わらず、物価だけが上がる状態が続いている。
――スタグフレーションの懸念が高まっているのはなぜか。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
株価のグラフを見ると、ここ1か月ほどで起きていることは、トランプの関税やアメリカの景気減速、もしくは景気後退が意識され、スタグフレーションの懸念が高まっていることが表面的な要因である。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
本質的には、ハイテク株やAIバブルが崩壊しかけている状況にある。アメリカの株価が高すぎたことがあり、AIバブル・ハイテクバブルが崩壊しかけている。スタグフレーションはそのきっかけや売りの口実にすぎない。トランプ大統領が政策を進めると、なぜスタグフレーションが心配されるのか。まずインフレについて。保護貿易として関税をかけ始めており、来週4月2日には大規模な関税が予定されている。これにより物価が上がる。トランプ減税を年内どこかで延長すると、アメリカ人の消費を刺激し、物価上昇につながる。移民を制限し、1100万人を追い返すとすれば、アメリカは労働力不足に陥る。企業は賃上げを行い、その分を価格に転嫁せざるを得ず、物価が上がる。関税や移民制限は景気を悪化させる要因である。ただでさえイーロン・マスク氏による政府職員の大量解雇や教育省の廃止などの発言が不安を増幅させている。教育省が管理する学生ローンの返済がどうなるのか、不安が高まり、景気減速につながる。

――4月2日には、相互関税の詳細が発表される。半導体、医薬品、木材などの品目別関税や、自動車への25%の追加関税が発動される。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
日本は除外されるという甘い期待もあったが、市場ではその可能性は低く、日本も対象になると明言されている。もし日本からの自動車に25%の追加関税が課されれば、日本の自動車産業に大打撃となる。試算では、営業利益が3兆円から5兆円削られる可能性がある。トヨタの昨年2024年3月期の営業利益が5.3兆円であったことを考えると、トヨタ1社分の利益が吹き飛ぶ規模である。株価にも大きな影響を及ぼす。トランプ大統領の発言後、トヨタの株価は2%程度しか下がらなかったが、3月28日は大きく売られ、1日遅れで反応した。自動車メーカーはアメリカ国内での車種を絞り込むなどコスト削減策を講じるが、マイナスの影響は避けられない。