能登半島地震から1年と2カ月あまり。液状化の被害が大きかった新潟市 西区では住宅の解体費用を自治体が全額負担する公費解体が進んでいます。ただ、被災者に自己負担が発生するケースがあります。一体なぜなのでしょうか。
新潟市 西区の寺尾地区。

更地を見つめているのは立松修さんです。ここにはおよそ40年間住み続けた自宅がありました。
【立松修さん】「もうここまで来ちゃうと気持ちはすっきりしていますね。やっぱり一番最初に重機が入ったときが一番ぐっときたかな」

地震から1年以上たった先月18日、立松修さんと妻の有美さんは待ちわびていた公費解体を見守っていました。

【立松有美さん】「来るまではどうってことないと思っていたんですけど、さすがにちょっと見るとうるっとくるなっていうか。なんかいろんなものがこみ上げてくるなって感じです」

立松さんの自宅は、液状化で大きな被害を受け、大規模半壊と判定されました。

同じ場所で自宅を建て替えることを決め、立松さんが公費解体を申請したのが地震から3か月後の去年4月。

当初は申請から3~4か月程で解体が完了する予定でしたが、想定を上回る申請の多さなどから延期をくり返し申請から10か月たった先月、ようやく解体が始まりました。

【立松修さん】「(自宅を)そのまま使えれば…骨組みみると、骨組みしっかりしているからやっぱり起こせなかったのかなというのはすごく思いますよね」
寂しさの中で住宅再建への思いもふくらむ中、公費解体を巡り自己負担が…

【立松修さん】「解体に関わる家のすぐ近くの外構は公費で解体してくれるけど、道路際の壁とか、全部自費になるので」

公費解体は、地震で被災した家屋の解体・撤去を自治体が全額負担して行うものです。

ただ、公費解体の対象には解体に支障とならない小屋や塀、立木などが含まれないため、完全に更地にするためには自己負担が発生するケースがあるのです。

立松さんの場合、立木や外構の撤去などでおよそ26万円の自己負担が発生しました。

また、この場所での再建には別の懸念も…
【立松修さん】「困っているのは本当にこの道路。最終的な道路の高さが決まらないと、外構は作らないで残しておくしかない」

こちらは新潟市 西区の道路復旧計画です。
赤色の道路は、今年度発注される工事。一方、青色の道路は、再来年度に発注される予定の工事で、すべての道路が今年度中に始まるわけではありません。

立松さんの自宅前の道路は来年度に工事が始まる予定ですが、具体的な完了日程は決まっていないため、新居が建ったとしても道路に面する駐車場や外構は道路工事完了を待ってからの完成となります。

再建に向け一歩踏み出す度に出てくる被災者を悩ませる壁。
それでも立松さんは、その壁の先を見つめます。
【立松修さん】「今は逆にもうやることが決まったので、新しい家をせっかく建て直すのであれば、住みやすい自分たちのこれから残り、過ごしやすい家を作ろうというのにちょっと前向きな感じ。やっぱ動き出したからかな気持ちはすっとしているところですね」

能登半島地震から1年余り…復興に向け少しずつ進んでいるとはいえ、被災者の生活への不安は、払拭しきれていません。
