飼料高騰や資源不足…“野菜を食べる魚”の養殖で環境負荷の軽減を目指す

 今年7月、島村さんは料理人仲間たちと和歌山県串本町にある養殖場を訪れていました。

 (島村さん)「飼料価格は上がってきていますか?魚粉価格も?」
 (養殖業者)「そうですね、本当に上がっていますね。今回の飼料高騰に伴って少しずつは変化せざるを得なくなってくるのかなと」

 養殖魚のエサについて熱心に質問します。
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 国連食糧農業機関によりますと、世界の天然の魚の約34%が数を維持できないほど乱獲されている状態で、今後、魚の養殖がますます必要になってきます。しかし、養殖のエサは生の魚や魚粉が中心で、たとえば養殖のブリは1kg太らせるのに7~10kgの魚が必要で資源不足が懸念されているのです。

 (雲鶴 店主・島村雅晴さん)
 「魚粉が多く使われていますので、それも輸入に多く頼っている。それだけの魚を使うのであればエサじゃなくて自分たちが食べればいいじゃないかと。そういった部分をできるだけ減らしていきたいと考えています」
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 そこで、ミシュラン3つ星シェフや世界で初めてクロマグロの完全養殖に成功した「近大マグロの父」こと近畿大学の澤田好史教授とタッグを組み、“ミライの魚”を育てる取り組みを始めたのです。
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 では、具体的になにをしているのかというと、「アイゴ」という魚の養殖です。

 (近畿大学・水産研究所 澤田好史教授)
 「これが海から取ってきたアイゴの幼魚と成魚ですね。エサの種類を変えて飼ってみることで味がどう変わるのか」

 アイゴは独特の臭みがあり市場ではほとんど流通しない未利用魚ですが、魚では珍しく海藻なども好んで食べます。そこに目をつけ、魚粉ではなく廃棄予定の野菜で育てることができないか実験することにしたのです。
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 (近畿大学・水産研究所 澤田好史教授)
 「(Q魚がキャベツを食べる?)そうですね、普通の魚は肉食ですので食べないのですが、この魚は草食が強いので食べてくれるのではないか」
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 さらに独特の臭みはエサが原因とみて、水槽を3つに分けて、それぞれエサを「魚粉入り」・「植物性たんぱく質」・「野菜」にして味と臭みの違いを比べることにしました。アイゴには50日間それぞれのエサを与え続け、後日、育ったアイゴを食べ比べます。

 (雲鶴 店主・島村雅晴さん)
 「料理人が魚を育てるところから関わることによって、よりおいしい状態、エサを変えることでにおいを減らすというところと、あとは丁寧に処理をすれば臭みも出にくいというのもありますし、全体としての海の環境負荷の軽減のお手伝いができるかな」