段ボール箱の写真たちを「何とかしたい」
2003年ごろ、美術デザイン部長だった私はTBSの緑山倉庫に未整理のまま雑然と段ボールに放りこまれていたネガや写真が気になって仕方がなかった。スクラップブックに貼られた写真アルバムも多数あった。テレビ草創期から、TBS美術部の写真班撮影班が記録し続けた写真群だ。それらをまず赤坂に移送した。
写真にはほとんどメタデータというものがなかった。ネガケースに撮影か現像の日付と番組名が書きなぐってあるばかりであった。仕事の合間にまず整理をはじめた。その日付をもとに年代別に仕分けた。それらは美術部の大きなロッカーキャビネット10台分にもなった。
私にとってこれらの写真たちは、思入れのある大切なものだった。現代は、インターネットが普及して、必要な情報や画像を参考にできるようになったが、それ以前は、参考資料というものがあまりなかった。
私は1982年に入社し、担当した「週刊欽曜日」、「たけしのお笑いサドンデス」などバラエティ番組でコントセットのデザインに追われていた。神社・公園・レストラン・学校・工事現場・病院・職業安定所などありとあらゆるシーンがコントの舞台になる。それらをセットにしなければならない。しかも発注まで時間がない。そんな中で、ジャンルごとに分類された写真アルバムが大いに役に立った。

様々なシーンのデザインを考える際、美術部写真は仕事のパートナーとして欠かすことができないものであった。しかし、これらもインターネットの普及で不必要となった。指先ひとつでなんでも調べることができる。会社の限りあるスペースの問題で、役目を終えた写真群はいずれ廃棄されるだろう。私が会社にいる間に、なんとかして保存しておきたいと念じていた。