相容れない日本と北朝鮮の姿勢 解決への道筋は…
2002年の当時、なぜ事態は動いたのか?
朝鮮半島情勢に詳しい、東京国際大学の伊豆見元 特命教授は、背景に北朝鮮の『ある思惑』があったと話します。

「日本とまず国交正常化をするということの意味は、北朝鮮が国際的な孤立状況から脱却することが可能になるという意味で、ものすごく大きな意味を持っていた」

北朝鮮は当時、国際的に孤立し、経済的に苦しい状況にあったのです。

そして、もう一つ大きく影響したとみられるのがアメリカの存在です。
小泉総理が訪朝する半年ほど前の2002年1月、当時のアメリカ・ブッシュ大統領が、北朝鮮をイラン・イラクと並ぶ「悪の枢軸」と痛烈に非難しました。アメリカが北朝鮮を攻撃するのではないかという推測が広がる中、北朝鮮はアメリカとのパイプがあった小泉総理を通して事態の打開を目指したとみられています。

そうして実現したのが、9月の日朝首脳会談でした。
日本は平壌宣言で国交正常化後の経済協力を約束。一方で北朝鮮は、日本人の拉致を初めて認め謝罪しました。
しかしその後、北朝鮮が進めた核・ミサイル開発を受けて国際的な批判が高まり、国交正常化に向けた交渉は膠着したままです。

北朝鮮で日朝交渉を担当する宋日昊(ソン・イルホ)大使は先月、「拉致問題は解決済み」という従来の姿勢を改めて強調し、日本の出方を窺いました。

【北朝鮮 宋日昊 大使】
「日本が醜悪な制裁措置を取って日朝平壌宣言を白紙に戻し、両国関係を最悪の対決局面に追い込んだ。今後の日朝関係がどのような方向へ進むかはすべて日本政府の態度にかかっている」

これに対し、松野博一官房長官は…
「我が国としましては、日朝平壌宣言に基づき拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決をし、不幸な過去を清算して日朝国交正常化の実現を目指す考えに変わりはありません」

相容れない両国の姿勢。現状を打開するにはどうすればいいのか?
東京国際大学の伊豆見特命教授は、『経済支援』こそが最大の切り札だとします。

「日本からの大規模な経済支援というのは、(国交を)正常化しない限りできないと彼らはわかっているわけです。北朝鮮からすると、拉致問題について進展させたとしても、国交正常化ができなければ経済協力は一銭も受け取れない」

国交正常化を前面に押し出し、経済カードを持って交渉する。
それが拉致事件解決への数少ない道筋だと伊豆見特命教授はみています。
