春闘「満額回答」相次ぐも…なぜ実質賃金上がらない?
小川彩佳キャスター:
皆さんの実感は厳しいものがありますが、物価が上がっているというのも大きいですね。
なぜ実質賃金が上がっているという実感を持てないのでしょうか。
23ジャーナリスト 片山薫 記者:
実際、実質賃金はやや下がり気味なんです。
賃金が上がらない理由として“日本は生産性が低い”というのがあげられますが、実は別の理由があります。
そもそも、生産性が低いとはどういうことなのか。

BNPパリバ証券の河野龍太郎氏が示した、時間あたりの労働生産性(1998年=100)というデータによると、この25年間、日本の生産性は1.3倍に上がっています。アメリカほどではありませんが、ドイツやフランスと比べても、日本の生産性は上がっているといわれています。

ですが、時間あたりの実質賃金(1998年=100)はずっと横ばいです。むしろフランスやドイツの方が、日本より生産性は低いのに実質賃金は上がっています。そのため、「日本の生産性が低い」というのは原因ではないということなのです。

トラウデン直美さん:
2024年も春闘で賃金は上がったようなイメージはありますが、実感はないですね。
23ジャーナリスト 片山記者:
実は賃金がきちんと上がっていないのではないかというのが河野さんの分析です。

BNPパリバ証券の河野氏は、実質賃金が上がらないのは「大企業が利益を溜め込んでいるから」だとし、5%や6%では足りないというような指摘をしています。
小川キャスター:
頑張った分が賃金として返ってきていないということですね。

23ジャーナリスト 片山記者:
利益剰余金と人件費(全規模全産業)グラフによると、利益剰余金=企業の儲けは右肩上がりになっている一方で、人件費は上がっていないことが分かります。利益剰余金と人件費の差が開いていますが、本来は賃金に反映するべきじゃないかというのが河野氏の意見です。
※(出所)財務省資料より、BNPパリバ証券作成
トラウデンさん:
企業側が溜め込んでしまうのは、何かに対しての不安や備えからなのでしょうか。
23ジャーナリスト 片山記者:
理由はいくつかあります。
日本の企業では、賃上げよりもリストラをおそれているという点があります。労働組合などは、首を切られるくらいなら賃金を上げなくてもいいという諦めのようなものがあったようです。
また、企業は利益を溜め込んでおかなければならないと思っている点があります。リーマン・ショックや震災などの時のために、なるべくお金を貯めておこうということです。
ただ人件費はなかなか上げられないということで、活用されたのが非正規雇用です。

【“日本型”経営】
・賃上げより「終身雇用」
・将来不安おそれ「内部留保」
・「非正規雇用」の拡大
非正規雇用を拡大し、どんどんアウトソーシングしていけば、トータルで人件費はかからないため、ずっと横ばいになってるのではないかということです。
藤森キャスター:
一人一人の生産性は上がっていて、実質賃金はずっと変わらないにもかかわらず、会社の儲けはどんどん上がっているということですよね。やっぱりおかしいと思う。
23ジャーナリスト 片山記者:
多くの企業関係者も、その事実に気づいていないというのが河野さんの指摘で、「うちはそれなりに賃上げしている」と思ってしまうそうです。