生産者も消費者もWin‐Winになるには?
―――鈴木先生が言うように「減反政策でコメ不足」ということでしたら、政策を急に変えることは難しいですし、備蓄米の性格を緊急支援的なものというより、コメ価格の変動に応じて毎年介入する“為替”のように、備蓄米の性格を変えていかなければならないような感じもしますが。
「おっしゃる通り、備蓄米について運用を変えて、米価が2万円超えてきたら放出します、逆に1万5000円を下回ったら買い入れます、というように備蓄米運用を、数値で明確化してわかるようにすれば流通も安定化して、消費者にとっても、生産者にとっても、価格が範囲内に収まるようなルールを決めるということもひとつですね。」
「増産について2025年は増産する、と言っている方は増えているんですけど、そんな簡単に増やせないほど現場が疲弊していて、せいぜい3%程度しか全国で増産の見込みが立ってないんです、簡単ではない。農家がもっと作って価格が下がってもやっていけるような、生産を奨励するための補助金が、(他の国のように直接支払いで出るとか)、明確にしてくれれば、生産者も増産をやるよ!となり、生産が増えコメの値段も下がる」
「消費者は助かる、生産者も所得がある程度補填され、Win‐Winになるわけです。やはり政策が、この場をどう救済するかというインセンティブを生産者にしっかりと示せるようにしないといけない。ただ余ってる、足りてると放置しないで、どうしたら生産を増やし、増産しても所得が得られて、消費者は安い価格で買えるのか、それから、備蓄米の運用をしっかりルール化して、米の価格が安定していると思えるようにできるかどうか、この点が重要だと思いますね」
―――現場とのギャップをなくしながら、国としてのルール作りを強化する必要があると感じます。
◎鈴木宣弘:東京大学大学院 特任教授 元農水省官僚 専門は農業経済学 『世界で最初に飢えるのは日本』など著書多数