衛星・AIで漏水リスク検知 効率的な調査でコスト削減

学習を繰り返すことでAIの精度が高まる。宇宙水道局の費用は水道事業の規模にもよるが、年間で約数百万円。2023年からサービスを開始し、現在は東京都や福島市など20以上の自治体で利用されている。その中のひとつ、静岡県磐田市では…

磐田市環境水道部上下水道工事課 松尾聡幸さん:
効果としてはすごく大きいかなと実感している。

約17万人が住む静岡県磐田市の水道管は、総延長1390km。磐田市では漏水調査を専門業者に委託していて、わずか2人のスタッフで市の全体を調査している。調査員が徒歩で数10センチおきに地面の中の音を聞くことで水道管の異常を見つける。

調査スタッフ:
図面を見ながらその上を歩いていくようなかたち。(1日で)3~7kmの間ぐらいじゃないかと思う。

音を頼りに調査するため、交通量の多い道路の近くでは作業が思うように進まないという。

調査スタッフ:
特にトラックとかスピード出す車とかは結構音がそのまま反響してくる。(夜間のほうが)やりやすいが、このご時世、闇バイトかと怪しまれたりもするので、日中にできるところは日中になるべくする方がいい。

こうした地道な漏水調査も今年2025年1月から宇宙水道局を活用したことで、大幅な効率アップにつながったという。

磐田市環境水道部上下水道工事課 松尾聡幸さん:
(以前は)経験と勘によるところが多かったが、宇宙水道局の導入によって、漏水リスクの高い箇所の絞り込みができたので、より正確な精度の高い調査ができていると感じている。

漏水リスクが高いと分析された現場。地表では異常が見られない。しかし、地面を掘ってみると水道管に亀裂があり、勢いよく水があふれている。このまま放置されていたら地面が陥没するおそれもあったという。

磐田市環境水道部上下水道工事課 松尾聡幸さん:
きのうまで(約1か月間)で75件の漏水箇所が見つかっている。件数としては多い。これが事故になる前に未然に防げたというのは効果として、すごく大きい。

磐田市が過去に行った試算では市内すべての水道管の漏水調査には、期間が12年、費用がおよそ1億円かかることがわかった。今回、調査対象をリスクの高いところに絞ることで3か月で調査が終了し、費用を大幅に削減できたという。

一方で、磐田市では全体の25%を占める法定耐用年数を超えた水道管の更新も迫られている。水道管を新しくするのに、1kmあたり約2億円かかるといわれており、こちらも宇宙水道局を活用し、破損リスクの高いものから優先順位をつけて進めていくとしている。

水道管の老朽化による漏水への対策は自治体の財政を圧迫している。メンテナンス費用などを確保するため、来月4月、水道代を平均でおよそ40%も値上げする埼玉県の本庄市のような自治体も出てきている。天地人では今年2025年、水道事業の維持に困窮している自治体に対して、あらたなサービスを開始する。

天地人 樋口宣人COO:
下水に関しても、上水道と同じように様々なリスク診断・評価するサービスを展開しようとしている。前からそうした評価をするための準備をしていたが、(埼玉県八潮市で)事故が生じてしまった。我々としても忸怩たる思いがある。

天地人は2027年に自社で衛星を打ち上げ、リスク評価の精度をさらに高めていくとしている。

天地人 樋口宣人COO:
宇宙ビッグデータの活用についてはまだまだ無限の可能性があると思っている。自分たちが持てる科学だとか、技術だとかそうしたものを活用して、住民の方々が安心安全に将来に向けて希望が持てるような社会を構築していきたい。