存続の危機に「終わらせたくない」

土岐さん
「このお店も60年以上やってて、祖父と祖母がはじめたお店で祖父が早くに亡くなってからも祖母が頑張って今まで続けてきたので、この味を終わらせてしまうのはもったいないと思って」

「地元の人に愛されてきた食堂を継承したい」。土岐さんは食堂を手伝うことに決めました。経験したことがない飲食業でしたが迷いはありませんでした。小さいころから食べてきたちゃんぽん。慣れ親しんだ味でも、いざ調理場に立つと再現するのは簡単ではありませんでした。

土岐さん
「最初のころは味を覚えるというかいつもの味を表現することが難しくて、祖母にはよく味見してもらって、何度も確認してもらってました」

祖母に背中を押され開業

そんな土岐さんを昌子さんは温かく見守ってきました。

山本さん
「自分が覚えた腕やからね、自慢していいと思うんです。だから頑張ってやってくれたらほかに言うことはないです」

昌子さんに背中を押され、去年10月には自分の店「はっち」をオープン。山本食堂を手伝いながら「はっち」で腕を振るいます。「はっち」の名には伝統の味を継承する「末広がり」の「八」の意味が込められています。

お客さん
「ちゃんぽんの味が山本食堂の味と似ているので、受け継いでその味を守っているのかなと率直に思います」
別のお客さん
「新しいもの新しいものっていう時代だと思うんですけど、萩っぽさというか古き良きものがあると思うんでいいな思って。居心地もいいのでそれもあってここに足運んでいるのもありますね」

山本食堂は「かけがえのないお店」

小さい頃から親しんだ山本食堂は、土岐さんの人生を大きく変えることになりました。

土岐さん
「山本食堂が無かったらお店作ろうと思わなかったと思いますし、ここで育ったからこそ味を継承したいと思ったのでかけがえのないお店です」
山本さん
「いまは89歳」
土岐さん
「89歳、現役です、人一倍働き者なのでそういうところは見習いたいなと。そういう姿を見ているからこそ私もやらなきゃなという思いがあるので」

愛されて60年以上。地元の人に愛された味は孫娘が未来につなぎます。