キャベツのピンチ 「用心棒」をどうやって呼ぶ?
ーキャベツはどのように用心棒を呼ぶのでしょうか。
(東洋産業 大野竜徳さん)
「アオムシにかじられたキャベツはいろいろな化学物質を含む液が出ます。むしゃむしゃそれを食べたアオムシの唾液と傷ついた葉っぱから出る化学物質を頼りに、用心棒たちがアオムシを狙ってやってくるようになりました」
「アオムシに食べられてしまった傷口から出るにおいを頼りにやってきた用心棒たちは、まるで『まだ犯人は遠くに入っていないはずだ』といわんばかりにその傷口の味を確かめ、周りを触角でぺちぺちとたたき回ります」
「用心棒はアオムシの足跡を追っていき、逃げ損ねたアオムシを見つけたらお尻の針でひと突き、ブスリ。卵を産み付けます」
「哀れ、用心棒に目を付けられたアオムシは、その体に卵をたくさん産みつけられます。そして、体の中を食い荒らされてしまいながらもキャベツを食べ続け、約10日ののち、蛹になることはできずに、用心棒たちの幼虫が羽化するときに体を食い破って出てくるころに息絶えます」

(東洋産業 大野さん)
「ですが、アオムシもやられっぱなしではありません。産み付けられた卵が孵化できないようにうまく防御されたり、大きなアオムシだと寄生蜂よりも先に蛹になってしまったりすると寄生失敗」
「用心棒を返り討ちにするようにアオムシも負けずに生き残っていくものもいます。これからもキャベツとモンシロチョウとアオムシサムライコマユバチたちの戦いは続いていくのでしょう!」
「…と、まだまだ物語はここで終わりではありません。実はこの用心棒のアオムシコバチ、アオムシサムライコマユバチにも同じように寄生して幼虫を殺してしまう寄生蜂の仲間がいて…。生き物たちは日々戦いを続けています」
「こうしていろいろな生き物が駆け引きを行いながら生き残りをかけた変異を繰り返すことを『共進化』と言います」
「私たちの目に映るのはのんびりヒラヒラ飛んでいるように見えるモンシロチョウ。自然の中でいろいろな生き物との戦いを勝ち残って無事に成虫になることができた精鋭たちなのかもしれませんね」